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初任務


ノートを広げた状態で、優希はラウンジでペンを走らせていた。その様子は鼻歌交じりで、いかにも嬉しさがにじみ出ている。ソロ隊員としてやっていくと決めた優希にはもう悩ませる隊という存在はない。一人でこうして勉強をするのが、優希にとって一番落ち着くのだ。

ピロリン。端末にきた連絡に、なんだろうと開いてみる。

「ぼ、防衛任務……!」

連絡網の「防衛任務のシフトについて」という文字に優希が思わず呟いた。なんてボーダーらしい仕事だろうか。初めての仕事だ……!と気持ちがわくわくと高揚する。

シフトを決めるから、と提出した一週間の基本スケジュールでは、放課後ならいつでも大丈夫と記載していた。実際、放課後はいつもボーダーにいるのだから問題ない。こうしてきちんと連絡がくると、自分がB級になったという実感があるなぁとうきうきと連絡のさらに下を見たとき、ぴしりと固まった。

ご、ご、ご、合同……!連絡の中のその文字に、顔がひきつった。

確か防衛任務は基本5部隊であたっている。今回は5部隊、プラス優希というシフトらしく、初の任務ということもあり今回優希は他の隊にくっついた形での出動となるらしい。

どどど、どうしよう。知らない人と合同任務なんて。れ、連携を崩してしまったらどうしよう……。仕事が始まる前から、ラウンジにて優希は端末片手に震えていた。






「こ、こここ、こんに、ち……あっ、こ、こんばんは……」
「いいぞ、どっちでも」

夕方だからどっちの挨拶をしようかと思っていると、どちらでもいいと言われてしまった。は、はい……小さく返事をして、目を伏せる。

合同任務は荒船隊とだった。狙撃手二人に攻撃手一人の編成の部隊。最近隊に入った半崎くんは確か、同じ時期にボーダーに入隊したはずだ。

「俺らあまりお前の戦い方知らないから、気になることがあったら言ってくれ」
「い、いい、いえ、あの、お、お気になさらず……」

優希は考えた。任務をどうやってしのごうかをずっと考え、考え、とにかく訓練室でトリオン兵を斬って斬って斬り倒してきた。とにかくこの人たちの手を煩わせないように、迷惑をかけないように、それが最優先だ。

優希たちは危険区域の道路を、狙撃手たちは遠くから優希と荒船が見える位置で移動しながらの巡回となった。荒船は声をかけてこない。優希の緊張が伝わったのか、下手に刺激しないほうがいいと考えたらしい。それが優希には本当にありがたく、心の中で感謝の言葉を並べた。

バチッ!「!」不穏な音とともに、なにもない空中に黒い亀裂が入る。

徐々に広がるその奥には、暗いくらい闇。ゲートだ。本物を見るのは、これが初めてになる。

おお、きい。訓練室でも見たそれは、同じ大きさでもやはり大きく感じた。でも、大丈夫。これはトリオン兵。何度か戦ってみてわかった。このトリオン兵の動きはとても論理的だ。無機質さは不気味だが、癖さえ掴めれば難しい相手じゃない。ずううん、と目の前に現れたトリオン兵に強く武器を握った。

「トリオン兵捕捉。戦闘を……!」

荒船が仲間と連絡を取りだした瞬間、優希がトリオン兵に突っ込んだ。突然の無謀な動きに、荒船が思わず待て!と言いそうになった。しかし、だんっ!と地面を勢いよく蹴り上げ方向を転換した優希は、スコーピオンでずぱっ!とトリオン供給機関ごと装甲を破壊した。

「…………ふ、ふう……!」

無事にうまくいったことに優希が息を吐く。一連の動きを見ていた荒船も、ほっと息を吐いて笑った。

「すげえな。初めてで一発か」
「す、す……っあ、あり、がとございます……」

褒められてうまく言葉が出ず、とりあえず礼を言う。訓練室での練習の結果スムーズに動くことができたが、単独行動は複数人でのチームではまずい行動だ。出過ぎた真似をしてしまい、気を悪くしただろうか……とあわあわと荒船の態度をうかがうが、「無駄がねぇな、いいな」と荒船は機嫌良さそうに頷くだけだった。