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三上歌歩


やってしまった……完全にやってしまった……。鬱々とベッドに横たわったままぴくりともすることなく、かれこれ数十分が経過した。家に帰ってきた優希は、うっうっと自分がしてしまった行動に対する後悔と申し訳なさに涙していた。

荒船隊との合同での初任務を終え、優希のトリオン兵の撃破数は6体という非常に優秀な成果を収めた。と同時に、荒船隊全体での撃破数は、2体のみ。それも狙撃手が狙いやすい飛行型トリオン兵のみだ。手を煩わせないようにと体が勝手に動くレベルまで繰り返した訓練の通り、優希はほとんど無意識的に体が動きトリオン兵を斬ってしまった。それはつまり、それだけ単独行動をしたということで。戦闘中は相手のことだけ考えようと普段から気にかけた結果、どんどんとドツボにはまってしまった。

ソロ隊員でいくとは言ったが、こんな感じでやっていけるのだろうか。今回は偵察用トリオン兵が多かったこともあり、敵の戦闘能力はあまり高くはなかった。だけどこれから、しかも攻撃手ばかりの隊と合同任務だったら? 攻撃手の連携がかなりシビアだということは優希もよくわかっている。これからの任務を想像し、枕を抱えて「うあああ……」とベッドの上を転がった。











「えっそ、そ、ほんとっ、ですか?」

任務について話がある、と連絡が入った優希は、確実に先日の失態によるなにかしらの処罰だと思った。怯えながら中央オペレーター室に来た優希は、まさかの言葉に驚いて聞き返した。

「ひ、ひとりで……?」

なんと今後の任務は、優希一人であたっていいというオペレーターの言葉に、自分は夢でも見ているのではないかと思った。こないだのことを後悔しすぎて、妄想でもしているのではないだろうか。

オペレーターの人がいうには、なんと荒船隊長が進言してくれたそうだ。理由としては、単独でトリオン兵を倒してしまえる実力と、他の部隊との連携が望めないから。共に任務をしてみて、他人に助けられるという緊張が任務の妨げになると感じたと。それならばひとりで任務にあたり、他の隊と分散したほうが効率的である、ということらしい。一度の任務に5部隊が出動することもあり、緊急時にはフォローも可能である。

話を聞いた優希は、たった一回の任務で的確にそう判断を出せた荒船に「す、すごい……」以外の感想が出てこなかった。さすがに緊急の危険な場面では一人で隊とカウントしてもらえないが、通常の任務であれば一人で任務に出てもいいそうだ。

本当はあまりの歓喜に踊りだしたいくらいの気分だったが、「ですので、今回は久野隊員にオペレーターとの連携についてお話します」とオペレーターの人が説明をしてくれだしたため、心の中で静かに歓喜した。

話をしてくれているオペレーターの人の名前は三上さんというらしい。普通は任務時のオペレーションは隊のオペレーターが担当してくれるが、多の隊が出動する合同任務や即席チームを担当してくれるのが、中央オペレーター室のオペレーターである。これからソロで任務にあたる上での基本情報を教えるのが、今回の三上の仕事らしい。

ちなみに彼女、もとい三上歌歩は入隊して長いわけではないが、その確かな技術と支持の厚さ、もといファンの多さからこうして中央オペレーター室での顔になりつつあるオペレーターであった。

オペレーターの基本的な支援は視覚情報がメインなのだそうだ。状況に合わせてマップの全体図や敵の位置を表示したり、敵を発見後マーカーをつけたり、狙撃があれば弾の動きから狙撃手を割り出したり、やることは沢山ある。視覚や聴覚に作用する攻撃を受けたときにオペレーターの能力次第では被害を最小限にまで抑えることも可能だ。これをオペレーターは常に複数人数分やるのだから大変な仕事だと話を聞きながらあらためて思った。

「以上のこと以外でも、希望があればオペレーターができるだけのことをするので、不便があったらすぐに教えてくださいね」
「は、はい……」
「他に聞きたいことや、質問などはありませんか?」

「あ、や……だ、大丈夫、です……」視線を逸らしながら優希が答える。聞きたいことはあるが、自分が聞き出すとキリがない。優希が答えた後、三上はにっこりと笑った。

「オペレーターは隊員を支えるものなので、いくらでも質問していただいて大丈夫ですよ」

優希に質問があることを見越しての言葉と優しげな笑顔に、「は、はい……!」と優希もまたひとり、オペレーター界のニュースター、三上歌歩のファンになってしまうのだった。