▼ ぬるま湯にのぼせた
ボーダーという、近界民との戦闘を仕事とした組織。そこは中学生から20代までの若者が戦闘員として所属している。
今から4年半ほど前、近界民による大規模侵攻。そこからボーダーは瞬く間に巨大な組織に成長した。
それから少し経った頃。とある少女が本部に配属された。
名を、名字名前という。
▽▼▽
名前は本部所属のボーダー隊員である。住処はボーダー本部内なため、ご近所さんというものはいない。
彼女の一日はまず7時過ぎに起床することから始まる。本日のメニューは昨晩作ったみそ汁と焼き鮭とご飯と商店街で購入したお漬物とお惣菜というとても家庭的な朝食。早めに食べ終え食器を洗う。
身支度を済ませて部屋を出る。ボーダー職員と廊下ですれ違い「行ってきます」と挨拶をする。「行ってらっしゃい」と職員たちが笑った。
本部を出てから警戒区域をまっすぐ歩いて、学校に向かう。登下校は徒歩である。ここらはバスは通っていなかった。
学校に着いて友人と挨拶をする。名前は今ちゃんという。同じボーダー隊員で、オペレーターを務めている。しかし本部ではなく鈴鳴第一という支部なため本部で会う事は少ない。
「今ちゃんおはよう」
「おはよう名前」
「今日の体育って何だっけ?」
「多分バレーじゃなかった?」
「あーよかった外じゃなくて。今日寒いし」
「そうね」と今が笑った。名前は「一緒にチーム組もう」と言って今と、それから国近の席を見た。
「あ、そうか。国近ちゃんいないのか」
国近、彼女もまたボーダー隊員でオペレーターだ。今は近界へ遠征に行っている。ちなみにこのクラスにはもう一人当真という戦闘員もいる。彼もまた、現在遠征へ出ていた。
「何か変な感じね」
今が言った言葉に、「何が?」と名前が聞いた。今は「だって」と続けた。
「こういうとき、一番いなかったのって名前だったから」
こういうとき、というのは遠征の時期ということだろう。名前は「そう? まあ私優秀だから」と言ってとぼけて見せた。
「今回は参加しなかったのね、遠征選抜」
「ちょっと飽きただけだよ。またどうせ行くようになるから」
「他人事みたいに言うのね」
ふふ、と今が笑う。冗談を言ったのだととられたようだ。
名前は「そうかな」と言って苦笑した。確かにちょっと、変な言い方だったかもしれない。名前は自分が下手になってきているなと反省した。
(ぬるま湯にのぼせた 取り繕うのが下手になってしまった)
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