「兄さん、お誕生日おめでとう」
朝....ジョゼは食堂にてジャンに告げる。
「おう、お前もな。」
ジャンもまた嬉しそうに笑って返す。
ジョゼにとっては、どんなプレゼントより兄におめでとうと言える事、言ってもらえる事が嬉しかった。
そして、これからも誕生日が来る度におめでとうと言い合える事が何よりの楽しみだった。
「そういや.....飯はもう食ったのか」
ジャンは自分にのみ分かる程度に頬を緩ませている妹の頭を、ぽんぽんと軽く叩きながら問う。
「うん。」
乱された髪を整えながらジョゼは返した。
「寝坊助のお前にしちゃ珍しいな」
「今日....楽しみだったから、早く起きちゃって....」
「お前はほんっとーにオレの事好きなんだなあ....。」
「うん....好き。」
「............。」
あまりにストレートな告白にジャンは唖然としてしまった。
....そして、顔へと熱が集中していくのが分かる。くっそカワイイ。くっそ。
「あー...分かった分かった。とりあえずオレ、飯食うから...出掛けるのはそれからだ。」
「うん....。待ってるよ。」
「どこかに行くの?」
誕生日おめでとう、ジャン、ジョゼ、と柔和に微笑んでから、マルコが尋ねる。
「ああ。今日は丁度休みだからな。どこかの甘えたがオレと過ごしたいって聞かなくてよ」
ジャンはジョゼの頭を小突きながらひどく楽しそうに答えた。
「昔から...誕生日は一緒にいるものだから...」
彼女もまた幸せそうに微笑う。
「......じゃあ、僕も一緒に「駄目だ」
マルコが少し逡巡した後の発言は即棄却される。
「オレ達の誕生日だぞ。今日位兄妹水入らずで過ごさせろ」
「いや、今日どころか何時だって水入らずじゃないか...君等。」
マルコがやや呆れながら溜め息を吐く。....いつになったら兄離れ妹離れしてくれるのだろうか....
「ジャン....。ジョゼをお嫁に行かせないつもりですか?」
その時、三人の会話を聞いていたらしいサシャが横から口を挟んだ。
「急に何だよ芋女」
ジャンが彼女の方を軽く睨みながら言う。
「だっておかしいですよ。いっつも一緒で誕生日まで一緒って...。兄妹として不健全だと思います。」
「.....はあ?じゃあどうしろっていうんだ。」
「誕生日くらいジョゼを自由にして別の男性と過ごさせてあげるべきです。そしてジョゼも良い加減兄離れして恋を育むべきです!」
「.....恋愛に全く持って縁遠いお前に言われても説得力無えよ....」
「何とでも言って下さい!このままジョゼが一生独身だったらどうするんですか!!種の保存は生物の義務ですよ!?
平たく言えばジョゼはジャンに引っ付いてないで、自分の子供の父親になるべき人を探すべきなんです!!」
彼女の言葉にその場にいたほぼ全員が吹き出した。
「そういや子供ってどうしたら生まれるんだ?」
「おやコニー。.....それは私もよく分かりません。」
お気楽コンビを除いて。
「ついでにどこから生まれるんでしょう?」
「さあ....。ある日体の一部が分裂するとか...?」
「違うよコニー。口から生まれるんだよ。」
お気楽コンビがトリオになった。
「く、くちからっ....?本当かっ、ジョゼ...!?」
「そうだよ。君のお母さんの口が少し大きいのは君が支えたからなんだよ。」
「そ、そうか...道理でっ....、お前、物知りだな!!」
「いやあそれほどで「お前等いつまでやってんだ!!!!」
ジャンが勢い良くジョゼの頭をはたいた。
「....私も正直よく知らない。教えて兄さん。」
「知るか!!」
ジャンは妹のマイペースぶりに頭を抱えた。
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