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邪魔されたくないハナシ

昼休みを告げるチャイムが鳴り、私も周りに漏れず解放感を味わいながら伸びをしていたら……けたたましい音を立てて教室のドアが開いた。
ざわざわとしていた教室が一瞬で静まり返り、私も驚きのあまり伸びた格好のまま音が鳴ったドアに視線を向ければ、ドアを開けた体勢でこちらを睨んでいるキヨくんがそこにはいた。
教室中から向けられる視線を一切気にする事なく、一直線で向かってくる。


「お、おー佐久早どうし、」
「…………」
「き、キヨくん?」
「汚された、(名前)ちゃん消毒して……」


思わず古森くんと目が合った。
座ったままの私に覆い被さるキヨくんは大きな体を丸めて必死に抱きついている。
その言葉だけじゃ何がその身に起こったのか分からないけれど、キヨくんにとっては重大な事が発生してしまったらしい。
とりあえずこのままで良いわけがないからキヨくんを座らせようと立ち上がれば、座りながら私の体にぎゅーっとしがみついてきた。
肩に手を置いて、ふわりふわりと癖っ毛を撫でればしがみつく力が強くなる。


「キヨくんどうしたの?……お昼食べようよ」
「………………嫌だ」
「えっ……と、何があったの」
「……無理だっつってんのにアイツら訳分かんねぇ食い物口に押し付けてきやがった」


あー……、なるほど。
私が小さく息を吐くのと同時に、古森くんが苦笑いしながら頬をかいた。
教室でおふざけに巻き込まれちゃったからこの教室でも食べたくないんだろう。
でも私お腹空いたしなぁ。
人混みが大嫌いなキヨくんを誘うのは申し訳ないけれど、学食に誘うしかないかな。
キヨくんの頭を撫でながら机の横からランチバッグに手を伸ばしたら、その手を思いっきり掴まれた。


「……(名前)ちゃんの、弁当」
「えっキヨくんまさか狙ってる?私もお腹空いてるんだけど」
「もう俺は(名前)ちゃんの作ったもの食べなきゃ無理。……調子悪いんだ」
「うぅ、ん……確かに調子は悪そう」


そっとランチバッグを持つ手を引いたら、引いた分以上にキヨくんに引き戻された。
視線を下げれば、機嫌の悪そうな瞳が私を見上げている。
こうなったキヨくんはもう何があっても意見は曲げない。
諦めた私は大人しくお弁当を差し出した。
立ち上がったキヨくんは私の指を絡め取って無言で教室を出て行く。
……廊下に出たらキヨくんの教室の前で泣いている女の子を数人が囲んで慰めている光景が見えて、後ろから追いかけてきた古森くんとギョッとしてしまった。


「え、佐久早マジ何したの」
「想像だけど、泣いてる子が作ってきたものキヨくんに食べさせようとしたんだと思う」
「マスクしてんのに?」
「さすがに飲み物を飲む時は外すから……」


小声で古森くんと話していれば、ひしひしと感じる視線。
ちらりと見上げれば、ただ私を見下ろすキヨくんと目が合った。
何かかける言葉を探していたら絡まっている指に力が込められた。
言葉で何か言うより伝わるかもしれないと思って繋いだ指先に力を込めれば、キヨくんのまとう雰囲気が少し柔らかくなった。
……人とぶつかりそうになった時、柔らかくなったと思った雰囲気は一気に刺々しさが強まったけれどね。
私はため息を吐いてキヨくんの腕に寄りかかった。


「(名前)ちゃんが俺に寄りかかってるの可愛い。何?求婚?」
「……キヨくんの発想って時々スゴいよね」
「俺はいつでも(名前)ちゃんを迎える準備は出来てるから。年齢がそれを邪魔してるだけ……ずっと寄りかかってるんだ。やっぱりもうこれは入籍」


寄りかかるだけで求婚になるのね……なんて思ったけれど、それでも腕に寄りかかるのをやめなかったのは私の作ったものは当たり前に食べれるんだと言ってくれた事が嬉しかったから。
舞い上がりそうなほど嬉しいって思っている私の本心は、どこまでキヨくんに届いているんだろう。
ちらりと隣を見上げたら、同じタイミングでキヨくんも見下ろしていた。
真っ直ぐ絡んだ視線にキヨくんから目が逸らせなくなって、ぽやーっと見つめていたら後ろからシャッター音が響いた。


「はいはい。ごちそうさまー」
「……ちょっと何勝手に(名前)ちゃん撮ってんだよ。消せよ。俺に送った後ですぐに」
「佐久早もちゃんと写ってるってば!ホラ!」


古森くんに見せられた画面を見て恥ずかしくなった。
……私って普段こんな顔でキヨくんの事見てたんだ。
誰がどう見ても好きですオーラが出ている。
顔に熱が集まるのが分かる。
そっとキヨくんの様子を伺ったら、珍しく目を見開いて固まっていた。
あ、キヨくんも照れてる……!
古森くんからもらった写真は2人でスマホのロック画面になった。



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