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距離を縮める朝一番

耳元で鳴り響くスマホを手探りで引き寄せたら設定していたアラームで、朝練の準備を始めないと間に合わなくなる。どうにか眠い体を動かして身支度を整えた。
荷物を持ってリビングに向かった時、スマホに着信が入った。


「……宮ママ?おはようございます」
「おはよう(名前)ちゃん!出かける準備ってもう出来てたりするん?」
「ええ、出来てますよー!これからお母さんとご飯の準備しようかなってところで」
「ほんま!?お願いがあるんやけど、双子起こしに来てくれへん?なんや今日は治まで起きて来んで……あの子ら(名前)ちゃんやないと起きられへんやん?」
「珍しい……それは構わないですけど、私でも起こせるかなぁ」
「そこは安心やねん!やって双子は(名前)ちゃん大好きやから!あ、せめて朝ご飯はウチで食べてってな〜!」


お母さんに電話の内容を伝えたら、じゃあ今日は弁当作っておくから行く時に戻って来てねとのこと。
玄関に荷物とブレザーを置いてから隣の宮家に向かう。チャイムを鳴らすとパタパタと来てくれた宮ママに、持参した煮物を渡したら素敵な笑顔をいただいてしまった。
玄関先で別れて、私は双子の部屋を目指す。ドアをそっと開けて覗くときっちり閉まったカーテンのせいで薄暗いけれど、ベッドの上が丸くなっているのは分かる。
……まずは上段のサムくんから起こすか。


「サムくん起きて、朝ご飯食べる時間なくなるよ」
「……ん、(名前)……?一緒に寝よ」
「ご飯食べなくていいの?」
「いやや……飯食う」
「おはよう。準備して一緒に朝ご飯食べよう」


のっそり上体を起こしたサムくんが私の頬に手を添えて、挨拶を返してくれた。
このまま準備するだろうから良いけど、問題はツムくんだ。これが起こしてもなかなか起きない……。
階段を降りて、ベッドの柵に体を預けて様子を見る。ちゃんと時間を知らせてくれていただろうスマホのアラームは切られて端に追いやられていた。
布団から僅かに見え隠れする目は閉じられている。
とりあえず体を揺すって声をかけた。


「ツムくん起きてー!朝練行くんでしょ?」
「んっ…………んー……」
「あ、寝ちゃダメだってば。ツムくん!」
「(名前)もうそいつほったらかしでええよ。一緒に飯食いに行こう?」


目が覚めたサムくんは着替えを素早く終えると呆れながらツムくんを見て、顔を洗いに部屋を出て行った。
呼びかけながらツムくんの頭を撫でていたら、布団に収まっていた手が何かを手探りで探している。
どうしたのかと思って手を握ったら、勢い良く腕を引かれて布団の中に引きずり込まれた。
叫ぶ間もなく、そのまま布団と共に覆い被さって来たツムくんは私の体を下敷きにして、眠りに就こうとしている。


「ちょっ、え?ツムくん!?起きて……、ないの?待って待って、本当に起きてって」
「……ん、(名前)?え……、なんで俺と寝てるん?」
「ツムくんが今、引っ張り込んだんだよ……」
「あ、そうなん……じゃあこのまま(名前)抱き締めて寝るわ。ほら、腕枕したるから(名前)ちょっとこっちな?」
「何してんねん!侑離れろやっ!」


バッと布団が剥がされ、後ろから伸びてきた腕にすぐさま抱き上げられた。サムくんは私を横抱きにしたまま、ベッドで寝ていたツムくんを蹴り飛ばす。
揺れる不安定さから目の前にあったサムくんの首にしがみつくと、私の体と膝裏に回っている手にぐっと力が入って支えてくれた。
蹴られたツムくんがそのままやられっぱなしで黙っている訳もなく、ベッドから飛び出してきてサムくんに掴みかかるのかと思ったら……私の体を反対から同じように抱えようとしている。


「ハァ!?何お前俺の目の前で(名前)の事お姫様抱っこしてんねん!(名前)寄越せや!」
「朝から盛ってるツムには何も言われたないわ!」
「喧しい!サムかて抱っこしながら(名前)のおっぱいと太もも触ってるやろ!」
「こんなんラッキースケベや!触るならちゃんと触るっちゅうねん!」
「あぁ、もう!2人とも朝練遅れるから……!そ、それにツムくんも今触ってるからね!?」


双子に睨んで訴えてみたら、抱えられたまま両サイドからぎゅうぎゅうに潰された。
それに睨んだのになぜか、可愛い可愛いと言いながら双子の唇が顔の至るところに落ちてくる。
喋ろうとすれば、唇の端に吸い付いてきて何も喋れない。
……私が床に立たせてもらった時には双子はもう完全に覚醒していて、朝練に対して意気込んでいた。



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