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日常茶飯事協奏曲

決まると思っていた。
誰よりも早く飛び出していたサムくんの手元にドンピシャでセットしたツムくん。
双子の速攻が決まると思っていたのに読まれていた。
烏野の1年コンビのブロックに捕まってボールが自陣に落ちていく瞬間はスローに見えた。
鳴り響くホイッスルにその時は実感がわかなくて、あぁ……負けたんだって他人事のように思ったけれど喜ぶ相手チームと、下を向く稲荷崎の皆が視界に入ってまばたきをしたら涙が頬を伝った。


「……う、そ」
「ほら、タオル」


止まらない涙を強引に指先で拭っていたらタオルを押し付けられて、顔をあげたら角名くんにくしゃくしゃと頭を撫でられる。
視線をずらすとツムくんが烏野の日向くんに何かを言っているのが見えた。
蹴り合いながらベンチに戻ってくる双子を見ていたら目が合って、一瞬気まずそうな表情を浮かべた後、双子の手が私の頬に伸びて残った涙を拭われた。
肩や腰に回った腕に引かれて客席に挨拶を終えても、回った腕が外れる事はなくて。
先を行く北さんを追いかける双子に引っ張られ一緒にメインコートを出た。
……北さんの言葉に涙が止まらない。
ぐすぐすと泣いていたら双子に名前を呼ばれてきつく抱き締められる。


「(名前)、そんな泣かんといて」
「だって……北さんがっ!あんな事言うから」
「せやな。でもそんな泣いたら目ぇ赤なるから」


頬を挟まれおでこが合わさった。
片割れはぎゅっと腕に力を込めてから首筋に顔をぐりぐりと押し付けてくる。
涙が落ち着くまでずっといてくれた双子にお礼を言って着替えを促した。
着替えが終わって合流した時、双子は何も言わずに私の指先を絡め取って歩き出した。
移動中の会話なんてなくて、手を引かれるまま後ろをついて行く。
……その沈黙に耐えられなくなって、ぽつりと言葉をこぼしてしまった。


「ねぇ……他に出来ることあるか、な。これをやってもらったら嬉しいとか練習がはかどるとか、何か他に私が出来ること」
「「ずっと隣におって」」
「そ……、れは、もういるでしょ?」
「(名前)が隣におったらそれでええねん」
「(名前)がおるだけで十分やから」
「!…………うんっ!ずっといる!ずっと2人の隣に。私の方こそ、一緒にいさせてほしい」


私の答えは双子にとって満足のいくものだったみたいで、立ち止まって振り向いた双子の表情に見惚れてしまった。
好きだからずっと一緒にいたけれど……その年数を重ねれば重ねる程、双子の事どんどん好きにさせられている気がする。
いつだって私の手を引いて前を歩くその背中は安心感しかない。
けれど、すぐに真ん中に引っ張り入れてくれるんだよね。
前じゃなくて、隣に並んでくれるツムくんとサムくんにこれからも振り回されるかもしれない。
でも気付いちゃったから……。
そんな日常が私にとって何よりも幸せなんだと。


「ツムくんサムくん……好き」
「「俺も(名前)が大好きやで」」


ぎゅーっと抱きしめられて、頬に双子の唇が落ちてきた。
唇が離れた時、私は呟いた。
双子にしか聞こえない声で、愛してるよ……って。



【END】



|あとがき



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