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常にアピール

「(名前)ちゃんがいつも付けてるシュシュって色違いやんか?同じ色の方が使い勝手とか良くない?」
「え、うーん……それはそうなんだけどねぇ」


体育の授業で男子を眺めていた時に、私がしていたシュシュの話題になった。
今は休憩中だったから、結んでいた髪の毛をほどいてシュシュを眺める。
……黄色と水色のシュシュ。
少しだけくたびれた、どこにでもありそうなもの。
周りにいた友達も私の手の中を覗き込んだ。
見ていた友達がシュシュを見てあるものに気が付いた。


「今まで気付かんかったんやけど、チャーム付いてる?」
「うん」
「黄色にはAが付いてんな」
「こっちの水色はOのチャームやで……え、これイニシャル?」
「双子のね……色は髪の毛をイメージしたんだって」
「えぇ!それって双子の髪色なん……だから色ちゃうねんな」


顔の前に掲げて、揺れるチャームを見つめる。
小さくそこで存在を主張しているイニシャルに無意識に笑顔がこぼれる。
……高校に入ってすぐの時「これからも頼むな」って双子が考えてプレゼントしてくれたものだから、すごく特別なもの。
しかも聞いたら自分たちでチャームは付けたみたいだから、まさしく世界でたった一つの双子のシュシュ。
部活の時に私が髪を結んでいるのを見てたんだなぁ、って知っていた事がなんだか嬉しい。
その時、向こうからサムくんが駆け寄って来るのが見えた。
落とさないようにシュシュを腕に付けて手を振れば、勢いそのままに抱き着かれた。


「なぁ、何してたん?」
「自主休憩中!」
「なら俺も休憩する。……(名前)、髪の毛ほどいたんか?結んでええ?」


頷けば、正面から私の髪の毛をまとめ始めたサムくんに焦る。
え……後ろに回ってやるものじゃないの?
直視出来なくて思わず下を向いたら「顔上げて」と怒られた。
目を閉じて結び終わるのを待っていたら、友達から悲鳴が上がる。
何が起きたのか状況を把握しようと目を開けたら、サムくんが鼻が触れ合う距離まで顔を下げていて、唇を塞がれた。
……目がばっちりと合っている。
さらに友達がきゃあきゃあ言っているのが聞こえるけれど、髪をまとめているサムくんの手が後ろに下がる事を許してはくれなかった。


「……ん。シュシュ貸して。結ぶから」
「っ……は、い」
「ひとつ結びにしてもうたから、ツムのが腕に残ってまう。それはアカン。なんや主張されてて嫌や」
「それならこれも一緒に結んでおいてよ」


結び終わったサムくんは、その大きな手でひたすらに私の頭を撫でている。
大人しく受け入れていると、頬に両手が宛がわれて、引き寄せられた。
隙間なく合わさる唇が、離れてはくっついて……を繰り返す。
緊張から止めていた息を吐き出せば自分でもびっくりする程に甘ったるい声が出て、それを聞いたサムくんも驚いている。
腕を引かれて、しっかりと抱き締められた。
首と腰に腕が回って、ぎゅーっと力が込められる。


「可愛すぎるやろ、今のは」
「……聞かなかった事にしてっ」
「無理やろ。(名前)のかわええ声、友達にも聞こえとったで絶対」
「もう、やだ……!」
「俺の(名前)がめっちゃかわええ」


先生の集合のかけ声が聞こえた事をチャンスにこの場から走って逃げ出した。
逃げられたのも数分だけで、解散の後、すぐさまサムくんに捕まった。
友達もニヤニヤと囲んでくるし、その場にいなかった角名くんにも何があったのか教えて仲間を増やしているし……。
恥ずかしさから周りの会話を無視していたら、どこからか名前を呼ばれた。


「(名前)ーっ!おーいこっちやー!上や上ーっ!」
「!……ツムくん!」
「ポニーテールもかわええなーっ!」


教室の窓から身を乗り出して、手を振っていたのはツムくんで……からかわれていた今の私にとっては少し癒された。
片手を上げて思いっきり手を振り返したら嬉しそうに笑うツムくんがいた。
それを見上げていたら、上げていた手を取られてサムくんに後ろから抱き締められた。
その瞬間に、頭上から叫び声が落ちてくる。
サムくんはその声を聞きながら私の頬に音を立ててちゅーをした。


「俺と(名前)の時間邪魔すんなや!」
「……(名前)行こ」
「(名前)はサムより俺と話したいやろー!?俺ンとこはよ来てや!(名前)ーっ!」


ツムくんと会ってから、更衣室までの道のりまでサムくんがべったりだったけれど、着替えたタイミングで廊下にツムくんがいてびっくりした。
「待ちきれなくて迎えにきたで」と言ったツムくんのその手には愛用の制汗剤があって、顔と手の中のものを見比べているとニンマリと笑っている。
……いやいや、まさか、ね。
後ずさったら、腕が伸びてきて首筋にシューッと吹きかけられた。


「ひっ!?冷たっい!」
「これで俺とおんなじ匂いやんな〜腕にもかけたろ」


手を取られて、言葉通りに制汗剤を吹きかけられた。
部活が終わった後のツムくんと本当に同じ匂いがするから、包まれているみたい……。
目の前にいるツムくんを見上げたら、びっくりした表情で見られた。
私がその疑問を解消する前に、素早く行動を起こしたツムくんに後頭部を引き寄せられて唇を塞がれる。
角度を変えて何度も合わさる。
薄く開いた唇の間からツムくんの舌が入り込んできて私のと絡まった。


「さっきの顔はアカンやろ。そんな熱っぽい目で見んといて……って自覚してなさそうやけど」
「んっ……ん?」
「はぁ……俺の(名前)がかわええ……!」


ツムくんに手を引かれて、教室まで一緒に帰ったら先に戻っていたサムくんが私たちを見て顔をしかめた。
席に座った時、私の纏う匂いがツムくんの制汗剤だと気付いたサムくんに授業中とかノートでバタバタと扇がれた……。



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