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赤い花が散った。
手から溢れたそれを見て、「ああ、血か」と思った。
手に力が入らない。
まるで、身体の感覚が麻痺している様だった。
その場に倒れると、斎紫は朧な意識の中、名を紡いだ。
「斎紫様?さーーー。斎紫様っ!?」
誰かが悲痛な声で自分を呼んでいる。
僅かだが、身体を揺さぶられている様な気がした。
うっすらと目を開けると、そこには目に涙を溜めた季雨がいた。
「風早様―――」[ 59/61 ] [*戻る] [次へ#]
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