「コスプレ癖って。俺はただ好きな人に色んな格好をしてもらいたいだけだし、色んな彼女を見てみたいだけだよ」
「それだって。コスプレ癖っつーとアレだから、ドレッシング・フェティシズムとでも呼んでやるよ。略してドレフェチ」
「初めて聞いた」
「当たり前だろ。お前のために作ってやった異常性癖だ。感謝しろ」
「やだな、そんなこと言ったら結だってシトフィリアっぽいよ?」
「……」

結はシトフィリアという言葉を知らなかったらしく、ポケットからスマホを取り出し、すばやい動きで単語を検索している。そして結果が分かったらしく、俺の頭をはたいた。

「死ね。そして生まれてきた命に懺悔しろ」
「結が何を言ってるのか分からなくなってきた」
「え?結ちゃんがシトフィリア?マジで?だって姫菜ちゃん?」
「……」

乱入してきた縁さんはどう考えてもいかがわしいことしか言わなさそうなので一旦元にいた席に押しやった(何か文句を言っていたけど聞くだけ無駄なのでスルー)。森さんも結と同じようにスマホでシトフィリアの単語を検索していたが、しばらくスマホの検索画面を眺めて、ぽつりと呟く。

「……へえ〜」
「その微妙な反応が一番傷付くわボケ!」

とりあえず、異常性癖なので検索するのが怖いという方のために簡単に言うと、アレ。食べている姿に興奮する系。それだけ聞けばそんなものかと思うかもしれないけれど、言わばプレイするときに食べ物を使うやつ。食べ物を突っ込んだり塗りたくったりするのかと思えば、何だか俺からしても食べ物が勿体ないと思いつつ、蜂蜜くらいならえっちなのではないかと判断が鈍ってしまうが、まあそんな感じ。相手を物理的に食べるということか(カニバリズムとはまた違った意味で)。俺の頭もおかしくなりそうなので、気になるなら詳しくはグーグル先生にでも聞いてほしい。
そんな馬鹿馬鹿しいことを言っている間に、灰音さんが紅茶と焼き菓子を持ってきた。今回はクッキーじゃなくて、パウンドケーキのようだ。相変わらず美味しそうなにおいに心が休まる。



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