結は軽く笑いながら言っていたので、きっとこれが冗談だということは伝わっているのだろう。本当、何でこんなお人好し(ただし演技が出来るとは言ってない)がコント・ド・フェのキャストになんかなっているのか、やっぱりさっぱり分からないのであった。

「分かりましたよ。確率は同じなので、俺から飲みます。それで満足でしょ?」
「お、気前の良い男の子は好きだよ。僕の彼氏にしてあげよう」
「バイセクシャルでもないくせにその発言はやめてください。口の中で蛆虫が沸いたような気分になります」
「それどんな気分なのかなー!やばそうだなー!」

俺のこの縁さんを罵倒する言葉の選び方、どことなく結を連想させる。結は、俺がこうなる前からの知り合いだから、もしかしたら結の罵詈雑言を真似しているのかもしれない。思った以上に俺は結が好きなのか。

「やっぱり何か見てンじゃねェか、その視線は何だよ。ハッキリ言えっつーの」
「いや、俺は結のことが好きなんだなーって」
「それじゃあそこの変態と変わらねェよ!気持ち悪いから蛆虫でも飼っとけ!」
「違うよ、口調というか言葉選びが何だか結と似てきてるから好きなのかなって。ほら、よく人間は好きな人の真似を無意識にしてる習性があるって言うでしょ?」
「そうなのか?」
「そうらしいよ?」

結は満更でもないような顔をして、頬をかいた。これぐらい可愛げのある人物の方が、俺にとってはやりやすいし、付き合っていても楽しい。縁さんはなんかこう、楽しいのは楽しいけれど、系統が違うような気がする。別に嫌いではないけれど、会うのはたまにでいいかなって思うタイプの人間。そんな感じ。
さて、そろそろ飲まないと縁さんに何か言われそうだ。

「海音寺君?飲むんじゃないのー?それともやっぱり怖い?」

ほら言われた。

「飲みますよ。ちょっと話が逸れただけです。しかしこの場合、結局順番はどうなるんですかね。じゃんけんじゃなくなりましたけど」


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