「そうだよ。心配しなくても、僕も薬であれ水であれ、ちゃんと飲むからね。彼に僕が飲んだところで、誰も面白くないと思うけど」
「縁さんが飲むと面白くないのに、俺達が飲むと面白いんですか」
「たぶんね。僕にもちゃんと効能は現れるはずだけど、人によって薬を飲んでいるとか、飲んでいないとかわかりやすいとは思う。僕は飲んでもあんまわかんないほうかな」
「ふうん?」

ますますわかりにくくなってきた。もしかしてうさんくさくなる薬とかそんなものじゃないのか。それとも人から煙たがられる薬か。もしかしたらシスコンになる薬か。それだったら俺にしか効能はないし、他の三人が飲んだところで影響は出ないはずだ。そうなるとはめられるかもしれない。

「海音寺君、今変な事考えたでしょ、えっちだなあ」
「貴方には言われたくありません。万年発情ウサギ」
「オレの台詞取るな」

縁さんは俺の罵倒にも傷心することなく、俺の前に試験管が五本入れられた、試験管立てを笑顔で突き出した。

「そこまで言うなら君から飲んでみる?僕の愛のこもった薬」
「その言い回し本当に気持ち悪いです」
「ひどいなあ、そんなこと言って。それに最初の方が外れる確率高いでしょ?」
「変わらないと思いますが。どのタイミングで引いても当たりを引く確率は一緒です。理系のくせして知らない、とは言わせませんよ?」
「ちえっ。可愛くないなあ、全く」

縁さんが俺に最初に進めてくる時点で何かを考えているのではないかとつい身構えてしまうのだが、この時点ですでに引っ掛けようとしてくるとは。一応有名大学を卒業しているのだから、あまり舐められては困る。まあ縁さんはそんなこと知らないだろうけど(海音寺コーポレーションの御曹司と認識しているなら、むしろ社会の厳しさを知らないボンボンだと思われているのかもしれない。だからこんなに絡まれるのか)。
灰音さんと同じ大学に通えたなら良かったのに、俺の同級生はこの場では結一人だけだ。

「……何見てンだよ」
「別に。大学で隣にいるのが灰音さんだったらよかったのにと思っただけだよ」
「軽く嫌味だよな、それ」


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