この世界―――と言ってもお前らが住んでいる現代と生活は何ら変わらねえ。
そりゃ電気自動車は通ってるし、スマートフォンだって普及している。
今更狩りをしてるわけでもねえし、様々な道具を携えた猫型ロボットなんてのもいねえ。
つまりはそんな時代だ。
ここでは首都を東京ではなく、東宮というところにおいている。まあでも雰囲気としては東京とほぼおんなじみたいなモンだ。
そんな東宮を支配していると言っても過言ではない、『庭』と呼ばれる五つの名字がある。
芹沢(せりざわ)、落部(おとしべ)、花鶏(あとり)、若狭(わかさ)、そして俺たちの所属する萬鬼だ。
全ての苗字にくさかんむりがついていることから転じて『庭』と呼ばれているらしい。
そしてそれぞれが担当している分野を順に言えば、情報、政治、芸能、経済、裏の世界だ。

芹沢は情報を売買している連中だ。それのせいもあってか何だかんだ芹沢は他の『庭』とも結びつきが大きい。特に政治や芸能なんてジャンルは情報に振り回されやすいからな、重宝するのも頷ける。

その次、落部は政治を牛耳る存在だ。政治家の中に必ずと言っていいほど落部一家は重要なポストに就いている。
総理大臣に就いていた例もあるらしい。まあ俺が生まれる前らしいから定かではないんだが。

次、花鶏か。花鶏は芸能界にスターとなる人物を送り込む機関のようなものだ。花鶏家の本家を中心として、規模が馬鹿でかい芸能事務所を作り上げているくらいの大物らしい。実際俺はあまり好いていないんだが、まあ表向きは評判がいい奴らだ。

次は若狭だな、若狭は経営者の宝庫、と表現したら自然か。日本に数多くある財閥の中でトップはこいつらの若狭財閥だ。俺の親父に聞いてみたところ、どうも日本銀行とも太いパイプで繋がっているらしい。そりゃ他の中小企業が逆らえないわけだ。

そしてラスト、俺たち萬鬼の紹介だ。さっきは萬鬼を裏の世界を支配する苗字だと表現したが、もっと噛み砕いて説明すれば表の世界と裏の世界を繋ぐ仲介役だ。
ちなみに裏の世界と言うのは想像のとおり、違法に溢れたえげつないオトナたちの世界のことを指す。賭博はもちろん、薬に溺れて危ないやつとかもいるからカワイイお嬢さんとかが仮にも迷い込んでしまったら一発でアウトだ。二度と入る前の健全な姿には戻れないだろう。
まあ別に俺の家系としては裏の世界を管理しているのだから儲かってくれたらそりゃ万々歳だからな、危ないから入るなよとは言わねえ。むしろ親父なら勧めるだろう。

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