僕は神岡からメアリー・セレストという噂話を聞きました。
その内容というものは人が次々に消えるという類の話です。
神岡いわく、先生がこの事件を隠蔽していると僕に告げましたが、鹿ヶ谷の言うことを配慮して改めて考え直すと違う方向性が見えてきます。

先生が隠蔽している、のではなくこの事件そのものがないから隠蔽もクソもない。

だから他の生徒もこの事件のことを知らないのです。
無いものを見ろと言われても見ることが出来ないのと同じです。
だって無いのですから。
そして神岡は事情聴取を僕に頼みましたが、それは僕のクラス限定です。他のクラスには神岡が自ら行うと言っていました。
それはメアリー・セレストが存在しないという事実を悟られないようにとった言動とも考えられます。
僕が鹿ヶ谷に問うてみたように、メアリー・セレストのぼろが出る可能性があるからです。

でもやはりいくら考えても、神岡がどうして僕にわざわざメアリー・セレストなどという架空の御伽噺を持ち出してきたのかは依然として謎のままです。
僕に何をさせたかったのでしょう。
手がかりがあまりにも少なすぎて推理のしようがありません。とりあえず数日は神岡にでも事情を聞いて様子を見ることにしましょう。
結局は直接本人に聞けばいいのです。

「消失、か」

超常現象なら確かに問題ですが、人工的に作られたものならそれはそれで問題です。
僕の妨げになるものなのですから解決しなければなりません。
少し安心したのかだんだん順調に眠たくなってきましたので、転寝をすることにしました。
僕は早々に布団をもってきて、ソファーの腕置きを枕代わりに目を瞑ります。
今夜は瑞姫からのSkypeの約束を取り付けていませんから、ぐっすり眠ってしまっても大丈夫なくらいです。




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