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これの続き



「それじゃあなまえさまは殺生丸さまの妹さんなんだー」

「ここここここれは、とんだご無礼をお許しください妹君様!! 殺生丸さまに妹君様がいるだなんて知らず、この邪見はっ」

「いいよいいよ小妖怪。知らなかったなら仕方ないし」

「……邪見にございます」

「うん。小妖怪の邪見」

「邪見さまーはーしょーうよーうかーい」

「歌うでないわ!」



思わずふふ、と笑みがこぼれて小妖怪、ではなく邪見とりんを見る。
なんか落ち着くなあ。というか、癒される。

たき火の火がぱちぱちと音をたてて燃えるのを眺めているのを見て思い出す先ほどのこと。
兄上――殺生丸の側にいたらどうだ、という母上のお言葉で共に行動することを頼みにきた私。多少嫌がる素振りくらい見せるかと思いきや、兄上は私がなぜここに来たかを説明しているとき怪訝そうに眉間にしわをよせたりなど一度もしなかった。
「……好きにしろ」それだけを私に告げると、踵を返して森の奥にいるということだ。

りんと邪見も兄上といつも一緒らしく、邪見ならまだしもりんのような人間を兄上が連れて歩いていることに驚いてしまった。
まあ、兄上のしていることにとやかく言うつもりはないし、話していればわかる。この子はいい子なのだろう。



「なまえさま、これからはりんたちと旅をするの?」

「うん。そうなるね」

「わー!なんか姉ちゃんが出来たみたい……!よろしくねなまえさまっ」



にこり、という擬音がつきそうなくらいの笑みを私に浮かべたりんはぎゅっと私に抱き付いてくる。人間というのはなんて可愛い生き物なのだろうか。ずっと母上といたから気付かなかった。
「ほら邪見さまも!」「この邪見!なまえさまのご同行とてーも嬉しく思いますっ!!」「これからなまえさまと一緒だー」
微笑めば微笑み返してくれるりんと、話しかけるといちいち驚いたような反応を示す邪見に断わってその場から立ちあがる。



「兄上」

「………」



そして、私が向かったのは少し遠いところで見守るように岩に座っている兄上のところ。名前を呼ぶと兄上は口は開かず目線だけを此方へ向ける。
続きを言ってもいい、ということだろうと判断し、私は兄上に近づきながら話す。



「まずはこれからよろしくお願いします」

「……ああ」

「兄上と会うのはいつぶりでしたかね。その間にあんないい人たちに巡り合えていたこと妹として幸せに思います」



兄上の手に届くところまで近づいた私は静かに腰を下ろして兄上を見上げる体勢にする。
ふんっと兄上は目線を私から逸らすと、今度は私の名前を呼ばれる。



「なまえ」

「? はい」

「……自分の意思で、行動することだ」



私に全てを合わせるな、と。いつもの無表情で兄上は私に呟くように言う。
分かりにくかったけれど、つまりは何をするにも許可はいらないだとか。自由に生きればいいだとか。そんな優しさが言葉には隠れているんだろう。

私はふふっと小さく笑って返事をし、りんと邪見の元へ視線をやった。
少しくらい遠いと言っても耳がいいため会話は聞こえる。りんが邪見に何かをして、邪見が怒ってりんが笑う。そんな堂々巡りだ。
でも。



「楽しそうですね」

「………」

「いきなり来ちゃいましたけど、私もいつかあの中に入ってふざけあいたいです」

「………」

「仲間――になりたいと思っています」



これが本心だ。りんと邪見を見つめながら私は口にした。
兄上はそんな私の頭になぜか手のひらをおくと、そうかと口角を上げた。

久しぶりに見た顔だ。なんて。

空を見上げると、綺麗な星たちがきらきらと光っていた。
いつかは本当の仲間としてみんなと共に歩んでいけたら私は幸せだ。


(20140711)



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