短文置き場 
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(鬼不鬼)


鬼道くんからのメールを切った。最初は他愛もない話してたのにアイツが今度の日曜日に出かけようなんて言うから。一緒に駅前に遊びに行こうなんて言うから。おれ達は所謂そーいう関係なんだけど。イヤになってメールを返さなかった。日曜日に駅前に行ったけど鬼道くんはいなかった。
鬼道くんがひとりで泣いていた。おれが隣に座ると鬼道くんはびっくりしてぐしゃぐしゃな顔を上げた。情けねーの。おれがどうしたんだよって聞いたら鬼道くんはなんでもないって言った。なんでもないなら泣くんじゃねぇよバカっつって背中を蹴ったらベンチから落ちた鬼道くんがこっちを睨みつけてきた。なんだよそんくらい流せよバカ。
鬼道くんは佐久間の隣に行くようになった。鬼道くんはおれを見なくなった。なんでだよなんでだよなんでだよ。意味分かんねー。佐久間がすげえムカつく顔でこっち見てきたから源田に向かってボール思いっきり蹴った。なのに源田は難なく受け止めていい球だな不動って言った。うるせー空気読めクソ源田。
鬼道くんを屋上に呼び出した。鬼道くんはちゃんと来た。少し怯えたような顔して。来なくてもいいのに。お前の考えることがわからんと言われた。おれも分かんねーよって返した。鬼道くんは困ったような顔をした。情けねーよ。おれも、お前も。
鬼道くんおれのこときらいでしょ。そうでしょ。おれは鬼道くんきらーい。アッハ、なっさけねー顔! ねえねえそうでしょ、そうでしょ。おれ達きらい合ってたんでしょ。ならいいじゃん。さよならしようよねえ。
真っ逆さまにグラウンドへ。鬼道くんが屋上のフェンスに身を乗り出す。バイバイ。さよなら。このやり方が一番鬼道くんを縛りつけられるんだ。最後に見た大好きなアイツは泣いていた。

2011/12/11 12:20

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(創作)


ねえあたしあいつがにくかつたの。あいつからいちばんたいせつなものをうばつてやりたくてたまらなかつたの。ねえあなたそれがわかるの、わかるのかしら。わからないわよね、ねえあたしあいつがにくいからいちばんたいせつなあなたをうばつたのよ。きぶんはどうかしら。わたしはぜつこうちようよ。あなたは。あなたもきぶんがいいみたいね、だつてなにもいわないじやない。ねえあなたにわかるかしら、わかるわよね。あいつはあなたのこえがすきだつたの。だからあなたからこえをうばつたの。あいつはあなたをあいしてたわ。だからつぎにうばうもの、わかるわよね。ああ、あなたがあいつをあいさなければ、あたしあなたのことすきになつてたかもね、さやうなら。


2011/12/05 18:56

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(源佐久)


あぁ寒い。風は強いし日も沈んじまったし、おまけにこの広い公園にはおれ1人だ。寒くないわけない。マフラーは隙の出来ないようにきつめに巻いて、手袋嵌めてデカくなった両手を無理矢理制服のポケットに突っ込む。それでも防げるような寒さじゃないから、おれは二、三度足踏みをしてから白い息を吐いた。あぁ、コートでも着てくりゃ良かった。
最近めっきり寒くなった。サッカーで体動かしてる時はそうでもないのに、ちょっとでも動きを止めると、バカみたいに冷たい風が体を蝕んだ。いっそここで暴れてみようかな。1人で? それは嫌だ。あぁもう、源田まだかよ。
てか集合場所決めたの源田じゃねぇか。なんでこんなとこ選んだんだよ。源田ん家から確実に1キロあるぞ。おれん家からは200メートルちょいだけど。
一回家帰ろうかな。なんかあったかいの飲みたい。あ、でもそれも嫌だな。おれだけ飲むのはどうも忍びない。
じゃあアイツん家迎えに行ってやろうか。……………。……いや、それは絶対に嫌だ。プライド的に。やっぱもうちょい待とう。源田来たら脛蹴ってやる。




向こうから見知った顔が走って来るのが見えた。走ったせいなのか寒いせいなのかそれともどちらもなのか、鼻の頭とか頬とかが赤くなっている。
源田は遅くなってすまないと言った。悔しいから手袋をとった手を源田のマフラーの中に突っ込んでやる。源田は最初、驚いて首をすくめたが、ちょっと笑って、自分のマフラーの上からおれの手をさすってきた。
「冷たいな」
「当たり前だばか。何分待たせたと思ってるんだ」
「すまない」
「………まぁ、別にいいけど」
すまないとか言いながら、源田は笑っている。それになんか怒る気も失せて、長いため息を吐くと、あ、と源田が呟いた。
「佐久間、あったかい物食べよう。肉まんなんてどうだ?」
「肉まんかぁ…。コーンスープ飲みたいな」
「あぁ、じゃあそれ買いに行こう」
源田が手を差し出すから、おれは源田のマフラーから手を引っこ抜いて、源田の手を握った。でも、源田は手袋してるから布越しの体温がもどかしい。そんなこと考えてると、源田が唐突に手袋を外した。
「こっちの方があったかいだろ?」
おれはもう一度素直に源田の手を握り直した。おれの方が少しだけ温かい。
「源田」
「どうした?」
「………奢れよ」
そう言ったら源田が首を縦に振ったので、おれは、源田の脛を蹴るのはやめにした。


佐久間が寒がる話。

2011/11/23 23:23

title by 星葬

拘束される心(ビヨニス)



 あなたがこの手紙を読むのはいつでしょうね。元気にしてますか。わたしは元気です。唐突ですが、今日が何の日か、あなたにわかりますか。あなたはもう覚えていないかもしれませんね。それでもわたしは構いませんよ。期待、してませんから。
 最後にあなたの顔を見てから、どのくらい経つのでしょうか。あなたの国では、もう三度目の夏が過ぎたのではないでしょうか。わたしの記憶にあるあなたは、まだどこか幼さの残る十五歳です。今は、もう、十八くらいでしょうか。今度会ってみたいものです。あなたが望まないならわたしは身を引きますけど。
 長々とした文を書き連ねてしまいましたが、最後にひとつ、聞きたいことがあります。返事はいりません。
 あなたは今、幸せでしょうか。わたしはあなたが幸せであることを、未来永劫、望んでいます。




驚いたことに、この手紙は英語で書かれていた。流れるような筆記体で書かれた字には、彼の静かで鋭敏な性格が滲んでいた。情けないことに、おれはこの手紙が届いた日付を忘れてしまった。だけど、この手紙が、おれ達が別れを告げてちょうど三年目に届いたのは覚えている。その点では、彼の憶測は半分当たり、半分外れといったところだろう。
おれは返事を書かなかった。いや、書けなかった。彼の住所を知らなかった。その時初めて後悔した。彼といた時の自分の態度を。確かに彼を好きではいたが、あまりにも自分は素っ気なすぎた。
だけど、その後悔の痛みも、そう大きなものではなかった。住所も知らない彼に会う術は、もう何ひとつなかったからだ。
それでもおれは、ただひとつ、一番新しい彼の形跡を手放すことができずに、自分の記憶にある十五の彼を思い出すのだ。




2011/11/13 11:29

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ポッキーファイト!!(ビヨニス)※会話文です、おふざけです、ゲロ甘です



ビヨ「今日がなんの日か知ってますか」
ニス「知ってる、けど…」
ビヨ「ポッキーゲーm」
ニス「や、やらないからな!!」
ビヨ「ポッキーゲーム」
ニス「………」
ビヨ「恥ずかしがることないですよ。さあほら」←ポッキーくわえる
ニス「……ハァ…仕方ないなぁ」←渋々端をくわえる
サクサク…
ビヨ「……」
ニス「……」
サクサク…
ビヨ「……」
ニス「……」
サクサ………
ビヨ「」
バキィッ!!
ニス「!!?(ええええ!!? 折った!! ビヨンがポッキー折った!! 自分からやろうって言ったのに!!)」
ビヨ「……」もぐもぐ
ニス「ど、どうしたんだ、突然」もぐもぐ
ビヨ「まどろっこしい…!! こんな遠回しなキス、面倒臭いだけですよ」
ニス「(自分から言ったのに…)……そう? 楽しくていいんじゃないか?」
ビヨ「知らないです。そんなことより早く目、閉じてください」
ニス「あ、はいはい(キスはするんだ…)」



ワイルドビヨンさんも好き。

2011/11/11 22:57

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(鬼不)


何もかもが安上がりに、てんで価値のないものに見えたのなら、それは汚い成長の証だろう。
なんとなくそれが身近に感じられて、不動はまだ成長過程にある自らの胸元に触れた。幼いままでいたいとは思わない。けれど、この先を急ぎたいとも思えない。どちらを思えど、結果、時は変わらない早さでゆっくりと駆けていくのだが。
「寝ていないとダメだろう」
いつまで経っても横になろうとしない不動に対し、鬼道が静かに忠告した。それでも不動は鬼道を軽く一瞥するだけで、壁に寄りかかるようにして座ったまま動こうとしない。そんな彼の様子にため息を吐きながら、鬼道が不動の額に触れる。
「………少しは下がってきたみたいだな」
触れた不動の額は、僅かではあるが熱を持っていた。
鬼道の手がゆっくりと離れていく。不動はぼんやりとその様子を目で追った。
「きどう、おれ、大人になんか、なりたくねぇ…」
無垢な心なんてとうに消え失せてしまった。それでも不動は大人になりたくないと言った。きっと鬼道は自らの成長を拒んだりはしないだろうが。
静かにゆっくりと瞼を降ろす。暗闇の中で、ただ頬に添えられた手のひらだけが、温かかった。


2011/11/01 22:36

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重くて飛べません(源佐久)


今なら飛べるんじゃないかと思ったのに、それは叶わなかった。
源田のヤツが、おれの手を引っ張ったからだ。
本来なら今頃宙を舞ってるハズのおれの体は、源田の逞しくてあったかい腕の中にすっぽりと収まってしまっている。
なんだよ、これじゃあ、飛べないじゃないか。
自由になれない苛立ちに源田のわき腹を肘で打つ。でも、ヤツの腕は緩まなかった。
「佐久間、もういいよ」
もういいから、と源田は今にも泣きそうな声で呟いた。なにがいいんだかさっぱりだ。早く開放されたくて、おれは源田の腕の中でめちゃくちゃに暴れた。それでも、源田は腕を緩めずに、がっしりとおれを捕まえたままだ。
それから、おれは疲れて暴れることをやめた。ふと見ると、源田の手の甲に一筋赤い線が走っている。間違いなくおれがつけたひっかき傷だ。
それを見つけた途端に、今までふわふわ浮いていたおれの心臓が、ストンと元の場所に落ちてきた。それから、おれはガキみたいに泣きわめいた訳だけど、それでも源田はおれを離さないでいた。
源田はいつもおれを助けてはくれない。いつも殺さずに、生かすのだ。それがどうしようもなく悲しく、辛いのだ。



2011/10/27 06:53

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(基緑)



赤い髪が夜風に揺れている。
彼は今日も星を見ていた。みんながそろそろ寝る支度を始める、寒くて暗くて遅い時間に、彼はたった一人で星を見上げていた。
彼の一人の時間を邪魔したくないから、声をかけずに、――だけど、何故だか一緒にいたいと思って、――おれは彼の斜め後ろに腰を下ろした。
彼の見上げる夜空の星に、おれも視線をやる。色んな色、色んな大きさの星が漆黒の闇に散りばめられているその様は、心に響くものがあった。
「もっと近くにおいでよ」
突然声をかけられて、驚いて彼を見ると、優しい彼は微笑みながらこちらを見つめていた。
おれは黙って、彼の隣に座る。星ではなく隣の彼の横顔を覗くと、寒さのあまり赤くなった鼻先が、血色の悪い彼の顔の中でよく目立った。
寒かろうに、そう思って、彼の手のひらをそっと掬って握ってみた。生きてるはずなのに、ぞっとするほど冷たい。
彼は何も言わない。おれも何も言わずに、冷たい手のひらをさすっていた。すると彼は一言だけ、
「ありがとう」
と、呟いた。



2011/10/26 17:43

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:創作:((男)←女)


顔も知らないその青年は、少し堅苦しいところもあるが、繊細で、賢くて、何より優しい人である。
青年とのつながりは連続的に交わされる手紙だけ。少女と青年の関係は、所謂、ペンフレンド。ただの文通相手なのだ。
最後に手紙を出してから、幾日が経つだろうか。ここ数日の間、少女はその事ばかりを考えては不安を募らせた。
最近、空が晴れることが少なくなってきた。職を失う人が増えてきた。外で子供たちが遊ぶことがなくなった。日に日にわが国の衰えを肌で感じられるようになってきた。そして、
……少女は嫌な考えを振り払うかのように頭をひとつ振った。そして、小さく眉をひそめながら、窓の外を見上げる。
灰色の空に、鋼の戦闘機が冷たいままに飛び交っていた。


(青年は戦争に駆り出されちゃって、少女には金持ちの許婚がいる。)

2011/10/24 23:09

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(不動)

昔の記憶で、一つだけ鮮やかなものがある。
家族で星を見に行った。
近場の山に家族で登って、音も立てずにキラキラ輝く星々を見上げた。
一体どれほどの数の星が空にあるのかと、胸がいっぱいになった。


いつからか、星たちはただの背景に成り下がってしまった。空に星が浮かぶことも、春に花が咲くことも、波が干満を繰り返すのも、何一つ不思議じゃなくなってしまった。雪の白さにも、夏の空の青さにも、何も感じなくなってしまった。心のどこかでこの変化を知りながらも、その事実に対して何の感情も持たなかった。
ただただ、色が見えなくなるのが悲しくなって、切なくなって、


だから、

星が綺麗だと言う人間が嫌いなのは、きっとただの負けず嫌いなのだろう。


2011/10/23 21:02



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