標的1

「嫌な予感がする」

朝起きて学校へと向かう支度をしていると双子の姉である夏菜が呟いた。

「もしかして超直感?」
「多分…」

夏菜がさらしを巻きながら頷く。
ボクたちは昔からボンゴレのためだとナツには男装をボクにはお嬢様であることを強要されてきた。勿論生まれて戸籍に登録した所謂本名で呼ぶことさえもしてはもらえない。
未だに本名を覚えていて、呼んでいるのはお互いとお互いの恋人たちだけだったりする。
それどころかナツの性別ですら忘れている節があるからボクたちはこうやって毎朝人知れず準備をしている。

「ナツ。もしだったらセンセイに言ってみる?」

そんなボクたちのところにボンゴレから派遣されてきたのがセンセイことリボーンという殺し屋兼家庭教師だった。
最初は警戒していたし、センセイが来てからというもの事件の連続だった。でも、ナツにもボクにも大切な恋人が出来たから一概に害悪と言えるわけもなくセンセイと呼んでいる。
ナツはすこし悩むと小さく首を振った。

「いや、リボーンには言っちゃいけないような気がするんだ…。リボーンというかボンゴレにかな…?リボーンが来て獄寺君たちと仲良くなってから俺らがずっと知りたいと思ってたことがわかるような気がするんだ」
「ボクたちの知りたいこと…。ボンゴレが本当に信じられるかどうか…?」
「うん。今まで一緒に戦ってきた皆のためならボスを継いでもいいかなって思うようになってきたんだよね」
「そう…。ボクはナツがいいならそれでいいと思うよ。9代目もいい人そうだったし」

これは虹の代理戦争という事件が終わった後になるんだけど、ボクたちのもとへ9代目から手紙が届いたんだ。“シモンファミリーとの一件で有耶無耶になってしまったが、君たちが本当になりたくないというのであれば10代目にならなくてもいい”っていう内容の手紙が。
二人でしばらく悩んでいると下からお母さんの声がした。

「ツッ君―!ナッちゃーん!獄寺君と山本君が来たわよー!!」

そうだ…。今日は山本君が朝練ないからって4人で登校する日だったじゃん…。
ナツと顔を見合わせるとボンゴレにつけられた偽りの名で呼び合った。
「行こっか。“ツナ”」
「そうだね。“ナツ”」
そう。今からボクたちは夏菜は綱吉となり、ボク深夏は奈月となり、偽りの日常を送るために…。今日で最後になってしまう日常を…。


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