燃える髪





目が覚めると、そこは見慣れた古い天井だった。







「夢、か…。」





少女はめんどくさそうに立ち上がり、制服に身をまとった。
黒いセーラー服。
黒い髪に黒い目を持つ少女にはよく似合うものだった。


ただ一つ、異端なのはスカートの下から見え隠れする純白の包帯だけだった。






「行ってきます…。」






少女は、朝食も食べずに家を出た。
その足取りは、重かった。











―――





「おはよう!クレハ!」




通学路をただ黙々と歩いていると、同じ制服を着た少女が挨拶をした。






「・・・・・・・おはよ。」




クレハと呼ばれた少女は、挨拶をしてきた少女の方を一度も見ないで言葉を返す。
その機械的な態度に、すこしだけひるんだ。


だが、めげずに話しかけようと努力をする少女。





「あのね!クレハ。
今日の六時限目のホームルームね、合唱祭で歌い曲を決めるんだ。
クレハは何か歌いたいのある?」




「・・・・・特に何もない。」




「あ、そうなの…。
でも、歌うんならやっぱ明るい曲の方がいいよね!
その方が楽しいし、それに…。」







少女…クレハは足をとめた。
少女を見たクレハは相変わらずの無表情だが、その目には少しの負の感情が見えた。









「悪いけど、他の人と話してくれる?
もう、今日は帰る。」






「え…?」






サッと今来た道を引き返すクレハ。


その様子を呆然と見届ける少女と、周りにいた人たち。







「なによ、あれ。」



「もう話しかけなくていいだろ、あんな無愛想な女。」





「・・・・クレハ。」




話しかけた少女だけが、心配そうにクレハの後ろ姿を見つめていた。






―――







「・・・あほくさ。
何で、あの程度にこんな態度とったんだろ。」





頭をかきながら、商店街を歩く。
朝の忙しい時間だからか、いつもよりも人の往来が多い。







「ハア…。」







ため息をつきながら、道を歩いていると誰かにぶつかった。

大して早く歩いていなかったのに、何故かクレハだけが尻もちをついた。












「ぅッ!」





「あぁ!すまない!」








「ぃ、いや、こちらこそ、余所見をしていた…。」









ぶつかった青年…それは美しい赤い髪が特徴的な外人の青年だった。
青年はひどく驚いた顔をして、慌てた様子で謝罪した。








「いや、こちらもすこし考えごとをしていたのでな…。
すまなかった。
どこか、怪我をしていないか?」






長い髪をした青年は、クレハに手を貸し、頭を下げた。











「大丈夫…。
どこも怪我なんてしていない。」












「ならばよかった…。」




















青年が、優しげに笑う。
その笑顔を見たことないもののように凝視するクレハ。















「…どうかしたのか?」










「…いや、油断なさそうな風体してるのに随分優しそうな笑顔するんだなって思っただけだ。」












その言葉に、青年が少し目を開いた。
それに気づき気まずそうに視線をそらし、「じゃあこれで」といい青年の横を通り過ぎるクレハ。















「…今の少女は」














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