気まずさ
「…学校行きづらい。」
クレハは空を見上げる。
住宅街からほど近くの丘の上の公園。
普段なら、親子連れなりなんなりいるものだが中途半端な今の時間は誰もいない。
「何で被害者のほうが学校行きづらいんだか…。」
あの後、病院に行ったりなんだかんだして治療を終えたがそれから学校に行きづらくなってしまった。
「でもずっと休みっぱなしにもできんしな…。
まさかやめるわけにもいかないし。」
はあ…とため息をつき、これから先のことを考える。
「…めんどくさ」
櫓のような形をした遊具の上に乗り、空を仰ぐ。
青い空に、白い雲。
小鳥たちが飛び、チロチロと囀っていた。
まさに、平和な時間…。
しかし今のその状況も少女には面白くない。
もうひとつため息をついて目を瞑る。
-
「ん…?」
ナニか、違和感を感じて目を開ける。
目を開けると、自分を見下ろす形であの青年が立っていた。
「…あんた、昨日の…」
「…こんなところで寝ていると風邪をひくぞ。」
みると、胸元には黒のコートがかかっていた。
かけた覚えのないコートは、青年がかけたものだと察した。
「ありがとう。
だが、何だってこんなこと?」
「たまたまここに来たら君が寝ていてな。
放っておいてもよかったが…それは忍びないからせめてな。」
「…そう。」
紅い髪の青年にコートを返す。
青年は、それを受け取りばさりと羽織った。
「こんなところで一人で寝ているというのは、危険だ。
少しは自分の身を顧みたらどうだ?」
「…はいはい。」
初対面に近い青年に言われ、クレハは少しイラッとした。
しかし、それは事実なので何も言い返せずにクレハは青年をジト目で睨んだ。
「…日本の子供は今の時間は学校にかよっているものなんだろう?
どうしたんだ?」
「…いきづらいし、つまらないからサボり。」
自然と目にいたい白の包帯に視線がいく。
その様子に何かを察したのか青年は「すまない、立ち入ったことを聞いてしまったな」といった。
「いいよ、別に。
それにあんたが思ってるようなことじゃないよ。
これはただの事故だし。」
「そうか…。」
「…あんたは留学生?
どっから来たの?」
クレハのその質問に青年は小さく笑い、そして少し考えた後に言った。
「私の名はカミュ。
ギリシャから来たのだが…留学生ではない。
仕事だ。」
「…カミュ、ねえ。
私の名前は神無月クレハだ。」
「そうか。
クレハか…。
よろしく頼む。」
「…ん、こっちこそよろしく。」
クレハはカミュと握手をした。
感じる手の感触が普通の人間とは違うのを少女はなんとなく不思議に感じた。
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