ナイト気分





雪のエリアから今度は蒸し暑いジャングルをあたし達は進んでいた。
聞こえるのは鳥の声と木のざわめき…。
田舎を通り越して未開の地っていうのが合うな、おい。


「ぁう!」
「アリア、大丈夫?」
「目に入らなかった?」



アリアちゃんが飛び出していた木のつるに顔をぶつけた。
少し息が上がってるみたいだし、大丈夫かな…?


「どっかで休んだ方がよくないか?」


蒼摩が心配そうに言うと、
今までずっと隠れていたあいつが口を開いた。


「この先に村がある。そこで休め。」
「栄斗!」
「ずっとつけてきてたからいつ出てくるのかと思ったら、唐突だね。」


声かけるにもかけらんなかったし…。
ほら、隠れたのに話しかけるのって勇気いるじゃん。
声かけるのがめんどくさかったっていうのもあるけどね。

「まあな。」
「それより、出たり消えたりしやがって!
 ちゃんと付いてくるんだろうなあ?
 お前がいないと土の遺跡にあるコアが…。」
「少し気になることがある。
 お前達は先にいけ。」
「!
 お、おい!なんだよ、それ!」


またも姿を消した栄斗の声だけが響く。
その声は少し笑いを含んでるように聞こえる。


『それから、後ろから楽しいやつが追ってきてるぞ。』

栄斗の去り際の言葉に、あたしはげっそりする。


「言われなくても気が付いてるよ…。」


だって、栄斗の他につけてきてるのって…。
あれしかいないじゃん。


「?
 ホタル、楽しいやつって誰だ?」
「見ればわかるよ…。」


あまりあいたくはないんだけどなァ…。
なんて悠長に考えてたら、その楽しい奴が茂みをかき分けてやってきた。
うわ、もうおいついたか。


「ぉーい!
 待ってくれざんすぅ〜!」
『市先輩!?』


茂みをかき分けて来た奴…制服を着てるけどどこからどう見てもおっさ…ゲフンっ!
いい歳をした男がこちらにやってきた。


「出た…。」


あまりこの人好きじゃないんだよなぁ…。
なんか、こう、漠然としない感じだけど…とりあえずきらいだわ。
出来れば、一緒になんか歩きたくないけど市…とかいうのと光牙と蒼摩は
楽しそうに前を歩いてるから、しょうがなくあたしは一番後ろを歩いてた。

「アリア、紹介するわね。
 この人はパライストラの先輩で…。」

ユナとアリアちゃんが立ち止る。
道のど真ん中に、片膝つくあやつ…。
ぅわ、どうしたの?


「美しき聖闘士、海蛇座の市ともうしやす。」


そのまま言うと、アリアちゃんの手を取り、その手の甲にキスを…。


「市先輩!」


ユナの絶叫とともに、蒼摩と光牙が市先輩を羽交い締めする。


「離れろぉ―――!」
「なにするっ!うののーーー!」


蒼摩と光牙で必死に止める。
よし、グッジョブだ二人とも。

あたしは無言のまま、そのまま海蛇座に近づき…。


ゴッ




一部の迷いなく顔面を踏みつぶした。
あえて表情なんてものは作らず、殺意を持って見下ろす。


「ッうご!?」
「ホタルッ!?」


あたしは踏みつぶしながら見下した。


「次下手な真似したら、肉体ごと魂ズタズタに焼き殺すからな。
 これは嘘じゃなくて、本気で。」
「は、い…。
 すみませんでした…。」

あんたが美しき聖闘士だぁ…?
アルバフィカとかアスミタとか、シジフォスとか…。
とりあえずあたしの時代の黄金聖闘士を見てこい、二度とそんなこと言えねえから。

…あ、でもそのためには一度死なないとね。


「ホタル…。こえぇ…。」
「アリアちゃんを守るための正当防衛だと思えば大したこと無いよ。」


あたしが初めて見せた表情に光牙が怯える。
しかしこれくらいで済ませたんだから感謝してほしい位だ。



「それより先輩、どうやって逃げてきたんだよ」
「いや〜大変だったざんす〜。襲撃の時、ちょうどトイレにいたざんすよ!」

「トイレェ!?」

「おう。そのまま隠れていたら、
 マルスの手下どもも帰っちまったってわけざんす!
 そのままうまく逃げてきたざんすよ」


市の説明に眉をひそめる。
なんか、おかしくない…?
あの状況で、トイレに隠れてて助かった?
闇の小宇宙が充満していた、あの空間で?

「よーし、皆!アテナのために戦うざんす!
 だって俺たち、アテナの聖闘士じゃないざんすか!」


疑ってる状況だからか市の台詞は、妙に白々しく聞こえた。


「市先輩、助かってよかったな。」
「お、おう!俺は不死身の市様ざんす!」


笑う光牙と市の二人を見ながらあたしはくちかけた遺跡らしきものを見た。
どうも、視線を感じていやだな…。









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