02





「すみません!少しいいですか!?」





瞬はその女性に、話しかけた。
軽やかに歩くその女性は立ち止まった。







「ーはい?」







振り返った女性は不思議そうに顔を傾げた。
間近でみると、目が痛くなるくらいきれいだ。








「あの、失礼ですけど、あなたと一度お会いしたことありましたか?」









明らかにナンパの時と台詞。
ふつうの女性ならば、普通は警戒するのだが、
その女性はたおやかに笑いながら首を振った。








「いいえ、ありませんわ。」



「ですよね…。なんていうんだろう、あなたの小宇宙…っじゃない、雰囲気がどこかで一度あった気がして…。」








しどろもどろになりながら言い訳をして、その場から立ち去ろうとする瞬。
だが、女性はその手をはっしとつかんだ。









「、え?」




「あなた、もしかして聖域の方かしら?」









嬉しそうに、笑いながらそう訪ねる女性。
それはきらきらと光り輝いて美しい笑顔だった。
だが、瞬は女性が言った言葉に驚いてそれどころではなかった。










「なんで…!?聖域のことを!?」









目を見開いて押し殺した声で女性に聞いた。
駆け寄ってきた星矢達も、その言葉に一気に警戒をした。










「すこし、お話ししません?
あなた達を信頼して話たいことがあるのです。」









だが、女性はそんな剣呑な雰囲気でも全く動じずに瞬達に聞いた。
その提案に一瞬迷ったが、話を聞いて損はないだろうし、
彼女が何者かを知るためにその提案に乗った。






「じゃあ、そこのカフェテリアで話しましょう。」



「ええ、いいですわ。」







青銅5人と女性は近くのオープンカフェで話をすることにした。
もちろん、向かい合って座っているがその警戒心はまったくといていない。







「何からお話ししましょう…。」






女性はおっとりとした口調で五人に聞いた。
その様子は繕った感じは全くなく、寧ろそれが自然体な事が伺えた。







「まずは自己紹介をしておいた方がいいだろう。
俺の名は紫龍。」



「俺は星矢!」


「僕は瞬。」


「俺は氷河だ。」


「一輝だ。」






5人が名前を言うと、女性はそれを復唱した。







「紫龍さんに、星矢さん、瞬さんに、氷河さんに一輝さんですね。
私の名前は」







そのとき、女性の声と、近くにいた子供のだだをこねる声が一瞬重なった。







「…ティアです。」




「ティアさんか…。いい名前だな!」




「それで、ティアさんは何者なんですか?聖域を知っているっているって……。」





「私は別に身分を恥じるような者ではありませんわ。
それに私、聖域とは昔から関係にあるの。」




「関係とは…?」




「大したことではありませんが、私はアテナに祭壇に祭る香木や、
炉で燃やすための聖木を献上しているのです。」









そういってティアは、大きい皮のカバンをテーブルの上に置いた。
なかには美しい絹の布で覆われている長い束のようなものが入ったいた。
それからは微かに優しい木の香りがした。








「でも、なんで木なんかをアテナに渡すんだ?」




「昔から、祭事や占をするときなんかに炉で火を焚くのですけど、
その際にはしっかりと清めた香木を使うのですよ。
私は昔からそれを献上する役割を担っているのです。」




「じゃあ、これがその清められた木なのか?」




「ええ。」








一気に警戒心を解く星矢達。
しかし、腕組をしたまま憮然とした態度を崩さない一輝はおもむろに口を開いた。








「で、なんでそれを聖域に渡すはずのおまえはこんなところで油を売っているのだ?」







一輝のつめたい言葉で一気に場が凍る。
みんな一瞬気まずそうな顔をしたが、ティアは苦笑いしながら答えた。







「お恥ずかしい話、私はいつもなら使いの者に香木を届けるのを任せていたのです。
しかし、もうここ最近全く外に出ていなかったので、その届ける作業をこっそりやることにしたのですが……。
好奇心に寄り人里に来てしまったのです。
そしたら此処がいったいどこなのかわからなくなってしまって…。」





5人は、ティアの説明を聞いて、一瞬で理解した。






「ようするに……。」



「迷子になってしまったという事か?」








「お恥ずかしい話……そういうことなのです。」











prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -