アテナの像の前…ヘスティアはその前に立った。
「愛しい我が姪・戦女神アテナよ。
あなたに祈りを捧げましょう。
受け取っていただけますね?」
アテナの像を背に、ヘスティアはアテナへと凛とした声で声をかけた。
「えぇ。
謹んでお受けいたします。」
ヘスティアは、ふと目を瞑った。
そして目を見開いたときにはその目は真紅にそまっていた。
「…アテナ、貴女にこれから先、輝かしき勝利と他に変えられぬ平和がありますように。
聖なる火と竈の女神・ヘスティアからあなたに心の底からの祈りを捧げましょう。」
カッと光がさすと、手には銀杖が現れた。
ヘスティアはそれを翳すと、先端に火がともった。
「“ダーロス・プリエール”」
優しい焔の小宇宙が、あたりを包んだ。
その温かさと、美しさに自然と涙が浮かんだ。
「アテナ…あなたはあなたの道を進みなさい。
あなたの闘士とともに。
例えそれが…茨の道だとしても。
信じてあげなさい、人を、世界を。
あなた自身を。」
「…えぇ。
突き進みますわ、どこまでも。
この地上の愛と平和のために。」
日暮れがかった空を、美しい焔が一瞬煌めいた。
「勝利の女神よ、健やかに…そして清らかに。」
優しい祭神の微笑みは人々の心に焼き付いた。
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bkm