「藤木、大丈夫かなぁ?」






「やっぱり心配?」









慶次とゆきは二人で火鉢のくべられた部屋で藤木の帰りを待っていた。











「心配っていうか…あの子無礼っていうか…なんて言うか…謙信さんのことおこらせてないかななんて…」









「だいじょーぶだって!
謙信はそんなおこらないし!
大体藤木ちゃんってああ見えて世渡り上手そうだからそんなことしない…と思うよ!」









「…あはは」












一瞬の間があったことに、なんだか本当に笑えなくなってゆきは乾いた笑いをこぼすしかなかった。










「…それにしても遅いね。
まさか迷子かな?」









「あー…ありえそうで怖いなぁ…。
藤木ってちょっと方向音痴なところあるし…」







「うーん…じゃあ、俺ちょっと見てくるね。」














そう言って慶次が腰を上げかけた時、廊下が騒がしくなった。
その声は、だんだんこちらに向かってきているようだった。












「?」








「なんだぁ?」














恐いのかゆきが慶次にすり寄る。
それをなんだか心地よく感じながら、障子の先を見つめた。














「おねーさん!!超きれい!
胸をもんでいいですか!?」










「いきなり何を言う!
変態か!?」








「罵られて興奮するよなM気はないですけど!
お姉さんのように美しい人からだったらいくら言われても構わない気がします!
むしろそれでご飯喰えます!」












「気持ち悪いぞ!?」

















声の主の片割れはどうも聞いたことある…というか先ほどまで噂していた人物だった。













「慶次!
この女をなんとかしろ!」










「ケージさん!この綺麗なお姉さんの名前は何ですか!?」














障子が勢いよく開けられたのと、二人の叫ぶタイミングはちょうど同じだった。
















「何してんの…?
二人して。」








「知るか!こいつがいきなり私に抱き付いてきたのだ!」









「お姉さんがあまりにもきれいだから抱き付きたくなったんですッ!
何カップですか!?ていうか何でそんな色っぽいんですか!?」











「うるさい!黙れ!」














鼻息を荒くして金髪美女に抱き付く藤木は誰の目から見ても不審者だった。













「…あー、いったん落ち着こうよ。
ゆきちゃんすっかりおびえてるし。」












「ぁわわわ…」












慶次の後ろで完全に委縮しているゆき。
親友の興奮っぷりと気の強そうな女性を前に完全に怖気づいてしまった。













「ごめん!ゆき!
だけどあたしこのパーフェクトボディを前に落着いてられない!」











「お願い!藤木!落ち着いてぇええ!!!!!!!!」



















涙声のゆきの叫びが屋敷中にこだました。

























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