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「昨日あたしの彼氏がどうしてもスカートはいて来いって言うからー」

「今度彼氏の誕生日に何あげたらいいと思うっ!?」

「聞いてー!彼氏と仲直りした!」


どいつもこいつも、彼氏彼氏彼氏鬱陶しい。そんな彼氏が自慢か。話すのなら、壁にでも話しておきなさいよ。

所詮アンタ達の彼氏のことなんて、何も聞いてないのよ。カッコイイだのカワイイだの二人で言っておきなさいよ。

ええ、やつあたりよ。悪い?
私は生まれて一度も彼氏なんていないわよ。男がいなくたって私一人で生きていられるわ。


「何、話してたの?」

「由菜!ま、まぁちょっとね」

「うん、そうそう」


そうやってまたはぐらかす。どうせノロケ話でもしていたんでしょ。彼氏がいない私は仲間外れって訳。

ああもう、思い出したらまた腹が立ってきた!
いいわよ!私には永遠のイケメンアイドルがいるんだから!


由菜はカップに入っている砂糖を大袈裟に混ぜ始めた。紅茶が受け皿に零れそうになるが、寸前の所で止まっている。


「ホント、阿呆らし。あつっ」


思った以上に熱かった紅茶に軽く火傷をして、怒りの矛先が紅茶に向いた。溶け切れなかった砂糖が口の中に残って何だか憂鬱になった。


「甘……。やっぱ砂糖入れ過ぎたか」


折角のアールグレイが勿体無い気もしたが、無理して飲んでも余計に喉が渇くだけなので放置した。

由菜は至って普通の女子高生。どこでもいそうなごく平凡な少女。少し気が強いのを除けば、普通の女の子に何ら変わりもない。

ただちょっとだけ変わっていて、ケーキは好きだけどバイキングまで行くほどではないし、爬虫類好きっていうだけ。

それだけ。
……なんだけど、爬虫類ってのは引かれるんだよねー。あんなにカワイイのに。

そんなことより。
私は今片想い中って訳でもないから、恋愛話には仲間に入れてもらえない。

それ以前に“由菜は興味ないでしょ”って思われているのか、友達にあまりそういう話しをしてもらえない。

うん。私、一応女の子だし全然興味ないって訳でもないので。せめて仲間には入れてほしいなーって。

でもそんなこと素直に言えないし……。そんなんだったらネットとかで話してればいいし……。


一息ついたら近くで突然大きな音がして隣を見てみたら、アルミ製のペンケースを落とした男の姿が目に入った。

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