1/5

ヘタレな自分から卒業するために高校デビューをしてみた僕──ではなく俺、立川聡志(たちかわさとし)。

近頃の男はワックスなどで髪を立てているのでぼ‥‥俺もやってみた。これで皆から坊っちゃまヘアとは言われない。

前まで黒縁のレンズが厚い眼鏡をかけていたが、コンタクトレンズにしたのでメガネ!!とも言われない。


「立川聡志です。よろしく」


自己紹介も問題なくスムーズにやれた、はず。お陰でムードメーカーっぽい奴と友達になることが出来た!

しかしぼ、……もう僕でいいや。僕は中学から卒業しても変えれないものがある。
それはマンガ喫茶に通うことだ。

あそこの空間は堪らなく好きで辞められない。今日も学校が終わってから行くつもりだ。

あのマンガ喫茶へ行く時は“新しい僕”ではちょっと行きづらいので昔の僕でいく。髪を元に戻し、コンタクトを外して黒縁眼鏡をかける。これが素の僕。

財布やタオル、ティッシュは必ずリュックに入れて背中に背負う。準備完了。僕は足早にマンガ喫茶へ向かった。ちなみにそこは僕の家から歩いて十五分の所にある。


「いらっしゃいませ。何時間ご利用されますか?」

「三時間でお願いします」


ちゃっちゃっと手続きを済ませて席に着く。まずは最新号のアニメ雑誌を手に取り、読む。


(あーこの漫画、ついにアニメ化かぁ!声優さんが気になるな……お!!結構良いメンツじゃないか。録画必須だな)


雑誌と向き合ってニヤニヤしている僕に痛い+冷たい視線を感じた。痛いのは慣れているので対して気にしてないのだが。

視線の先に、バイトでやっているんだろうと思われる僕と同じくらいの女性がいた。とても露骨な表情でこちらを見ている。

そんなこともしょっちゅうある。僕みたいな人はここにたくさんいるんだ。だから僕は安心してニヤけながら本を読めるんだ。

雑誌を閉じて席を立つ。前読みかけた漫画の続きでも持ってこよう。
僕は『萌え少女の乙女日記』という漫画を探した。

今この漫画にハマっている。この漫画は簡単に言ってしまえば男が好む青春漫画だ。一冊に必ずあるお色気はドキドキもの。

戸棚に萌え日記(僕はそう略している)が並んでいるのを見つけた。それを取り出そうとしたら手が滑って床に落ちてしまった。

[ 98/131 ]

[*prev] [next#]
[しおりを挟む]
[mokuji]