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「ありがとう」


端麗な笑顔が彼の頭の中に残っている。優しい瞳に彼は魔法がかかったように動けなかった。

彼が彼女を忘れることは一生ない。彼女は彼の中で永遠と輝き続けるだろう。


  *


あれは今年初めて雪が降った時のこと。彼は外をふらついていた。家に帰っても親はいないし、今日はバイトもなく何もすることはない。

さんさんと降り積もっていく初雪の中、一人の少女に会った。

彼女はクリスマツリーに祈りを捧げていた。ふっと目をやれば、頬に涙を流している。5分……10分と長い間祈っていた。

何故か彼はずっと彼女を見ていた。目を逸らせなくて、彼女に見惚れていた。彼女が流す涙はとても綺麗だったからなのかもしれない。

いきなり話しかけるのにもいかず、彼はその場を黙って去っていった。
明くる日、再びここへ来れば彼女はまたいて彼は無意識に話しかけていた。


「‥‥なぁ、アンタ。ここで何をしているんだ?」


突然話しかけられて彼女は驚いて振り返った。彼女の瞳は潤んでいてとてもかわいく見えた。


「貴方には関係ないことです」


素っ気なく呟く。一度彼を見てすぐに目を逸らす。それ以上彼女は話すのを拒否したように見えたので、その日はそれだけしか話せなかった。

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