1/11

「ごめん、付き合えない」


その言葉を聞くと彼女は涙を流しながら、彼の横を走り去っていった。彼は髪をくしゃっとさせると溜め息をついた。


 今日で三人目……。流石に俺も胸が痛くなるな。


洲本慶馬(すもとけいま)は今までの事は、記憶の片隅に寄せて歩き出した。慶馬はいわゆるモテ男という奴で、女子から告白されるのは日常茶飯事だった。

頭はそこまで良くないが、スポーツならそれなりに出来る。ルックスはそこそこ良い方だ。何より優しい所がポイントなのかもしれない。

だが、恋愛には興味がなく女子は正直、どう接すればいいのか分からない。だから苦手でもある。


「よぉーっ、慶ちゃん! またコクられたんだってー?」


クラス友達の智樹が慶馬の肩を組んできた。いつもの事のように軽くあしらって席に着こうとすると、智樹がくっついてくる。


「‥‥何だよ」


いつもなら「そんな子に育てた覚えはないわよっ」とかふざけたことを言うのに、今日の智樹はニヤニヤしていてどこかおかしい。


「俺、彼女できたんだよねー」



[ 84/131 ]

[*prev] [next#]
[しおりを挟む]
[mokuji]