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「三郷健吾」

「へっ!?」


 突然出てきた名前に動揺を見せてしまうと、豊羽はやっぱりという顔をして頷く。


「峰岸、三郷のことが好きなんだろ?」


 私は豊羽から目をそらした。無言になった私をまっすぐ見つめ、私が喋り出すのをじっと待っている。確信をついただろとでも言いたげな態度をして。


「なの、かなぁ?」

「なら、告白しちまおうぜ」

「はぁっ!?」


 声を荒げて言ってしまったため、周囲の人たちが私を見る。恥ずかしくなって身を縮め込めた。


「な、何で告白なんか──」

「俺、三郷と同じ中学だから一応知っているんだ。俺が恋のキューピッドになってやるから告白しちまいなよ」


 恋のキューピッドなんて今時使う言葉なのだろうか……。

 そんなことより私が三郷に告白するなんて全然考えもしなかった。この際思い切って告白するべきなのだろうか。

それとも様子をうかがってタイミングを見計らってから告白した方がいいのか。
 その答えが出るのにそう時間はかからなかった。


「──分かった。するよ」

「よしっ!よく言った峰岸!!」


 パチパチと拍手をする。
 自分でもよく分からないが、豊羽がいれば心強く、告白する勇気が湧いてきた。


「じゃあまた今度の時、告白する準備をしようぜ」

「う、うん」




 そんな訳で『三郷に告白しよう計画』が始まった。
 まずは外見からかわいくなろうということでショッピングをすることになった。

 服を選ぶ豊羽は私より張り切っているので変な感じがする。
 私の普段着はズボンが多いので、それじゃあ魅力が引き出せない!とスカートをはかされる。

さらに女の子らしい服もたくさん着せられた。正直、ワンピースなんて小学校以来だ。

 試着室でスカート着替えた私を見て豊羽は言った。


「短いスカートも良かったけど、やっぱりここは白いロングスカートにしよう!おしとやかな雰囲気が出るし」

「さんざん悩んだわりにそれ?最初に言ってたのと変わらないじゃないか」

「あーそうだな。よし、次だ次!」

「ちょ、ちょっと!まだ会計済んでないから!」

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