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「────」

「うぅっうっ……ごめん。うぐっう……そうだ、これ‥‥。洗濯して、おいたから」

「ああ昨日あげたタオルか。いいよ、それ。それでまたそのナミダを拭いたら?」


 少年は私が言った言葉に頷いて泣きながら溢れてくるナミダを拭いた。その様子を見て私は再び軽く息を吐き、少年の肩に手を置いた。


「私が手伝ってやるから、泣くな」


 ぱっと顔を上げ、少年は泣き顔で嬉しそうに微笑み「ありがとう」と言った。




 掃除をする場所は廊下と階段。廊下は既に掃除し終わったみたいなので階段を掃除する。

 箒で掃くとちゃんと綺麗にしていない所為か埃が舞って煙い。私がゴミを掃き少年がゴミを取る。


「……そういえば、お前の名前知らない」

「あ、俺豊羽浩輝。ちなみにアンタは?」

「私は峰岸由亜。これで終わりね」

「あ、うん」


最後に集めたゴミを取ってゴミ箱に捨てた。豊羽と言った少年は「終わったぁー!!」と叫んで伸びをした。

私は箒を掃除道具箱にしまい、ついでにちり取りもしまってあげた。


「ホンッット助かった! ありがとな、えっと……峰岸!」


 歯を見せて笑う。豊羽は泣き顔より笑った顔の方が似合うな、と思った。
 その時、豊羽の後ろを眼鏡をかけたアイツが通って行った。


「──三郷健吾、がどうかした?」


 思わず見つめてしまっていたことにハッとして豊羽の方に頭を向け、急いで言う。


「何でもないよ」

「……ふーん」


 三郷健吾。私と同じクラスで室長をやっている。よく図書室に行っているらしい。

 古典の時間、あまりにも眠たくてうとうとしていたら先生に当てられてしまった。質問なんて聞いていなくて焦っていたら、隣にいた三郷が答えを教えてくれた。

 それ以来なぜか三郷に目がいってしまう。気がついたら三郷を目で追っている。


「さーて帰るか! 峰岸、悪いから途中まで送ってくよ」

「え、いいよ。今日は親が車で迎えにきてくれるから」

「そっか。じゃあこの借りは今度返す!じゃあな!」

「別に返さなくてもいいんだけどな。バイバイ、また泣くなよ」

 多分な!と苦笑いしながら返事を返し、私は笑って手を振った。

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