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「泣くなよ、男ならさ」


 ポケットに入っていたハンドタオルを少年へ渡した。少年は「どうも……」と言って受け取った。


 泣きたくても泣けない私にはこのタオルは必要ない。代わりにお前のナミダを拭き取ってあげよう。

 ──悲しい感情が分かるお前は。どんな毎日を送っているのか私は分からない分かるはずがない。

 けれど男は泣く生き物じゃない。
 ナミダを拭く少年をしばし見つめて、私は公園を去った。


   *


 次の日、今日でテスト終了となる最後のテストを適当にやりながら終わった。

 帰る支度をしてカバンを肩にかけて廊下へ出ると見覚えのある少年が肩を落としてしゅんとした子犬のように箒を持って歩いていた。


「あ、昨日の人」


 少年は私に気付いて近寄ってくる。
 コイツ、この高校に通っていたのか。


「いや昨日はありがとな。俺、ちょっとしたことで泣いちゃうヤツでさ……」


「あのさ──余計なお世話だと思うけど、また泣きそうな顔をしてるね」


 そう言うと少年は目にいっぱいナミダを溜めて泣き出した。私は軽く息を吐く。


 あの時といい、この時といいコイツは泣き虫な奴だな。そこら辺にいる女子よりもたくさん泣いているんじゃないかと思う。


「で、泣いているところ悪いんだけど、何で泣いているの」


 うぅと声を出しながら泣き続ける少年は、手でナミダを拭いながら問いに答えてくれた。

 話しを聞いてみると、この少年と少年の友達がふざけ合っていた所、偶然通りかかった先生にぶつかり、その拍子にカツラが取れてしまったらしい。

 カツラが取れた瞬間、多数の人に目撃され先生は激怒。当然のように説教をさせられて罰として掃除をさせられているそうだ。

 少年の友達も罰を受けたのだが、今日は用事があるらしく帰ってしまったらしい。

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