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ある日不意に話しかけられた。


「‥‥‥‥何か用?」


不機嫌そうに鈴が話しかけた。ずっとこちらを見る慶馬に、嫌な気持ちになったのだろうか。
いやそれは違う。鈴は朝は弱い奴だと慶馬は知っていた。

何故なら毎日、鈴の様子を見ていたからだ。こう言うとストーカーらしく聞こえるが、彼はそんな気持ちは一切ない。ただ鈴に興味がある、というだけだ。


「や、何も」


「‥‥だったら、じっとこっちを見ないでくれる?」


声のトーンがいつもより低い。鈴は本当に朝が弱いのだと再確認した。また新しい発見に慶馬は嬉しくなった。


「何、笑ってんの」

「あ、いや、別に何も。気にするな」


冷たい口振りに少々慌てながら答えた。思わず顔に出てしまったようだ。このままでは、怒らせてしまうのに違いない。

でも、怒った鈴も見てみたいと思う慶馬がいた。怒った鈴はこれまで見たことがない。


何かいい言葉がないかと考えている慶馬から視線を逸らし、鈴は黒板を見て呟いた。


「モテるからって調子乗ってんじゃねーよ」


その言葉には思わずカチンときた。いくら興味を持っていても、聞き捨てられない。


「お前に何が分かるんだ」


言った後で後悔した。まるで拗ねた言い種だ。実際は拗ねているが、それ以前に低レベルな台詞だ。

鈴は勝ち誇った顔でこちらを見ていたので、いたたまれなくなって机に伏せた。
同時に、授業が終わる合図のチャイムが鳴った。

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