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周りの人々が裕吾の方に顔を向ける。一瞬静まり返ったがまた賑やかな雰囲気になった。

ペンケースから飛び出したペンを拾い集めようとすると隣に座っていた由菜がそれを手伝ってあげた。


「はい」

「あざーっす」


ペンを受け取ろうとしたら裕吾の手が由菜の手を触れてしまい、慌てて離した。ペンは再び床へ落ちてバラバラになっていった。


「ご、ごめん」

「いや私の方こそごめん!」


お互いしゃがんでペンを集めて手を伸ばした時にまた手が触れる。
二度も触れ合ってしまうと次の言葉が中々出てこなくなる。


『──あの!』


勇気を振り絞って言った言葉までも重なってしまって完全に動揺を隠せないでいた。


「そちらから、どうぞ」

「私は大したことじゃないんで、そちらからどうぞ」


いやいやと言って発言権を譲り合う。息切れするまで譲り合い、一度冷静になった。それから二人は笑い出した。


「俺ら、何やってんだろな」

「ホント、まるで漫画みたいだった」


さっきまでの出来事が馬鹿らしく思えてきて自嘲した。
この出来事がきっかけで裕吾と由菜の仲は親密になっていったのは、もう少し後の話。

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