1/3 「昨日あたしの彼氏がどうしてもスカートはいて来いって言うからー」 「今度彼氏の誕生日に何あげたらいいと思うっ!?」 「聞いてー!彼氏と仲直りした!」 どいつもこいつも、彼氏彼氏彼氏鬱陶しい。そんな彼氏が自慢か。話すのなら、壁にでも話しておきなさいよ。 所詮アンタ達の彼氏のことなんて、何も聞いてないのよ。カッコイイだのカワイイだの二人で言っておきなさいよ。 ええ、やつあたりよ。悪い? 私は生まれて一度も彼氏なんていないわよ。男がいなくたって私一人で生きていられるわ。 「何、話してたの?」 「由菜!ま、まぁちょっとね」 「うん、そうそう」 そうやってまたはぐらかす。どうせノロケ話でもしていたんでしょ。彼氏がいない私は仲間外れって訳。 ああもう、思い出したらまた腹が立ってきた! いいわよ!私には永遠のイケメンアイドルがいるんだから! 由菜はカップに入っている砂糖を大袈裟に混ぜ始めた。紅茶が受け皿に零れそうになるが、寸前の所で止まっている。 「ホント、阿呆らし。あつっ」 思った以上に熱かった紅茶に軽く火傷をして、怒りの矛先が紅茶に向いた。溶け切れなかった砂糖が口の中に残って何だか憂鬱になった。 「甘……。やっぱ砂糖入れ過ぎたか」 折角のアールグレイが勿体無い気もしたが、無理して飲んでも余計に喉が渇くだけなので放置した。 由菜は至って普通の女子高生。どこでもいそうなごく平凡な少女。少し気が強いのを除けば、普通の女の子に何ら変わりもない。 ただちょっとだけ変わっていて、ケーキは好きだけどバイキングまで行くほどではないし、爬虫類好きっていうだけ。 それだけ。 ……なんだけど、爬虫類ってのは引かれるんだよねー。あんなにカワイイのに。 そんなことより。 私は今片想い中って訳でもないから、恋愛話には仲間に入れてもらえない。 それ以前に“由菜は興味ないでしょ”って思われているのか、友達にあまりそういう話しをしてもらえない。 うん。私、一応女の子だし全然興味ないって訳でもないので。せめて仲間には入れてほしいなーって。 でもそんなこと素直に言えないし……。そんなんだったらネットとかで話してればいいし……。 一息ついたら近くで突然大きな音がして隣を見てみたら、アルミ製のペンケースを落とした男の姿が目に入った。 [しおりを挟む] [mokuji] |