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次の日、彼は彼女が来る前にツリーの所へ来た。クリスマスシーズンは既に終わって飾りは取り外されていた。もう彼女はここに来ないかもしれない、と思ったが少しでも期待して待ち続けた。

いつもと同じ時間に彼女はやってきた。彼に気が付いてちょっと困った表情をする。


「……また、いらしたのですか」


丁寧な口調で尋ねてくる。彼は照れくさそうに口を開いた。


「アンタと友達に、なりたくて。俺、近藤英明」

「わ、私は‥‥佐藤さりあです」


名乗られたからには自分も名前を言わないと失礼だろうと思って答えた。躊躇って間を空けたのはその理由があったためだ。

そんなことは気にもせずに英明はさりあが話してくれたことに喜んで微笑む。


「佐藤は‥‥さ、どうしてこの木に祈っているんだ?」


さりあは黙り込む。指を唇に当てて困惑している。その表情はどうしたことか、悲しそうだった。


「貴方には関係ないことなんです。……でも、最後に言っておきます。

‥‥‥‥私の弟はこの木のてっぺんに星を飾っていました。ですが足を滑らせ、落下。直ちに救急車に運ばれましたが打ち所が悪かったためすぐに死んでしまいました」


ふっと顔を上げて木のてっぺんを見上げた。綺麗に輝く白い星がそこに残っている。この木だけ星が飾られていた。



「毎年この木に星を飾ることを弟は楽しみにしていました。‥‥あの時私がしっかりしていれば……っ」


昔の自分に怒りを感じながらさりあは告げる。そして急に彼女の足元がふらついた。英明は慌てて彼女の体を支える。

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