1/4 「ありがとう」 端麗な笑顔が彼の頭の中に残っている。優しい瞳に彼は魔法がかかったように動けなかった。 彼が彼女を忘れることは一生ない。彼女は彼の中で永遠と輝き続けるだろう。 * あれは今年初めて雪が降った時のこと。彼は外をふらついていた。家に帰っても親はいないし、今日はバイトもなく何もすることはない。 さんさんと降り積もっていく初雪の中、一人の少女に会った。 彼女はクリスマツリーに祈りを捧げていた。ふっと目をやれば、頬に涙を流している。5分……10分と長い間祈っていた。 何故か彼はずっと彼女を見ていた。目を逸らせなくて、彼女に見惚れていた。彼女が流す涙はとても綺麗だったからなのかもしれない。 いきなり話しかけるのにもいかず、彼はその場を黙って去っていった。 明くる日、再びここへ来れば彼女はまたいて彼は無意識に話しかけていた。 「‥‥なぁ、アンタ。ここで何をしているんだ?」 突然話しかけられて彼女は驚いて振り返った。彼女の瞳は潤んでいてとてもかわいく見えた。 「貴方には関係ないことです」 素っ気なく呟く。一度彼を見てすぐに目を逸らす。それ以上彼女は話すのを拒否したように見えたので、その日はそれだけしか話せなかった。 [しおりを挟む] [mokuji] |