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「え、三郷!?」


彼は本棚に体重を預けて静かに眠っていた。傍らには数冊の本が置いてあった。
里夜は思わず健吾の寝顔をまじまじと見詰めてしまった。

健吾の顔をよく見てみると、とても綺麗な容貌で鼻筋や唇などが整っていた。

眼鏡をかけていると眼鏡だけに目がいってしまって顔はよく見ていないんだということを思い知らされた。

起こすのも何なのでそっとその場を去って、散らばっている本を片付けてあげようと立ち上がったその時だった。


「!!」


急に腕を掴まれた。後ろを振り返ると目を覚ました健吾がこちらを見詰めていた。


「どこへ行く」


低音の声が響く。その質問に里夜は素直に答えた。


「本を片付けに。…駄目、ですか?」

「いや……」


そう言って健吾は腕を放して視線を逸らす。それから数冊の本を持ってゆっくりと立ち上がった。

黙って本を本棚に戻していく。
その様子を見ながら里夜は先程から気になっていた事を尋ねた。


「あの、質問してもいいかな」

「……何だ」


「今日‥‥保健室へ行った?」

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