4/4 ふっと教師を探してよく見てみると、黒髪のよくいそうな教、いやセラファがよく知っている人物がそこに立っていた。 黒髪で黒い瞳をしているようだが、正真正銘執事のレインだった。見惚れている女子生徒がちらほらいる。 セラファは片眉を上げて心に怒りを覚えた。手に力が入り、小刻みにラケットが揺れる。 レインは皆の様子を見ていたが、セラファの視線に気が付いた。目が合うと、営業スマイルをしてきた。 ずかずかとはしたなくも大股歩き、レインの前で立ち止まる。ラケットを彼の首元に当てて低く言い放つ。 「ここに来るなとあれだけ言ったでしょ。どうして貴方は私の言ったことを守れないの?」 「セラファ様をお護りするのが私の役目ですから」 「答えになってないわ!」 ラケットで首を攻撃しようとしたが、呆気なくかわされた。 先程から皆の視線が痛いほど感じる。いけない、レインは変装していても目立つ存在だ。さっさと帰らせてしまおう。 いつも持ち歩いている麻酔銃を取り出して、素早くレインの背後へ回る。狙いを定めて、彼に撃つ。 「曽根さん、ラケット落としましたよ」 レインはラケットを拾う素振りをして、麻酔銃を軽やかに避けた。撃った麻酔はそのまま壁に刺さる。隙をついてレインが足払いをしてセラファの体勢を崩すと、即座に彼女を抱き上げた。 「すみませんが、曽根さんが体調不良みたいなので保健室へ連れていきます。皆さんは打ち合いを続けていて下さい」 『はい!』 元気が良い返事。と感心している場合ではない! レインにお姫様抱っこをされて羨ましがっている女子が、多数こちらを見ている。人前でこんなことをされるのは、セラファでも恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。 「降ろしなさい!貴方はいつも私の勉強の邪魔をする!」 ばたばたと暴れているのに、レインは涼しそうな表情で体育館を出ていく。連れてこられた場所は保健室ではなく中庭で、ベンチの上にゆっくりと降ろされた。 セラファは口を尖らせてぷいっと横を向く。そんな彼女を見て、くすりと笑う。彼女の機嫌がますます悪くなる。 「どうせ貴方のことだから、私の後ろをつけていたのでしょう。そして、この学校へ転勤もしてきたのでしょう?」 「はい」 即答に返事を述べて、いつもの微笑みを見せる。セラファは大きく溜め息をついて、つくづく勝手な執事だわと思った。 > [しおりを挟む] [mokuji] |