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「大人しくすれば、優しくしてやるよ」

「やだ、やめてよっ!何でこんなことするの!?」

「何で?ハハッ。それはな……桐生が苦しむ顔が見たいからだよ」


私のブラウスのボタンを一つ一つ外していく。下着が露になると、鎖骨に口付け、胸元をまさぐり始める。その動きは、気持ち悪くて仕方ない。


「どうして…」

「‥‥アイツがこの学校に来る前は、俺はそれなりに充実した毎日を送っていた。アイツが来てから──俺の喜びを奪った。

皆から頼られる人気者は、俺だけでいいんだよ!何で、誰とも仲良くできないような奴が俺の上に立つんだ!

だから、俺は、アイツに失恋した女を慰めてやっているのさ。優しいアイツは苦しそうだったよ」


くっくっくっと喉を鳴らして笑う。今の幸弘くんは優しそうな彼とは、全くもって別人だ。

これが彼の本性なのか、それともなぎちゃんの所為でこうなってしまったのか、私には分からなかった。


「どうやら桐生はお前が好きみたいだからな」

「違うよ!なぎちゃんは私のことなんて、何とも思ってない!」

「へぇ?」


面白そうに眉を動かして、太股を撫でた。再び、不快感が背中を走る。私が助けを求めて叫ぼうとした時──勢いよく教室の扉が開いた。

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