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「幸弘くん、今どこ‥‥!?」


携帯で幸弘くんに電話しながら私は走っていた。誰もいない教室に入ると、幸弘くんが一人佇んでいた。優しい微笑みを見せる幸弘くんの元へ走って、抱きついた。


「千代ちゃんには俺がいるから、泣かないで」


幸弘くんが私の頭を撫でてくれる。私はその温かさに、ぎゅっと幸弘くんを抱きしめた。

ずっと、なぎちゃんを信じていた私がバカだった。あんな指輪なんて、何も意味を持たない。なぎちゃんは私のことなんて、何も憶えてないんだ──


「千代ちゃん」


幸弘くんは私の名前を呼んで首筋にキスをした。
背中が、ゾクッとした。


「俺が癒してあげるよ」


耳元で囁かれた台詞に、鳥肌が立った。幸弘くんの瞳は、いつも穏やかな目をしているのに、怪しげな目をしていた。


「幸弘くん…?」

「桐生なんて忘れさせて、俺だけしか考えさせなくするから」


ガタンと机が音を立てる。机の上に仰向けにされた私の目の前には、口の端を上げて怪しく笑う幸弘くんがいる。


「い、イヤッ!!」


激しく抵抗しても、男の力には敵わない。逃げ出したくても、両手首を掴まれて逃げ出すことができなかった。

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