7/14 「今頃になって何でそんなこと言うの!なぎちゃんは…なぎちゃんは私のこと、忘れたんじゃないの!?」 目に涙を溜めながら、声を荒げた。なぎちゃんは困ったようにして、目を伏せた。 「……忘れてないよ」 小さく呟く声。その声は、あまりにも小さすぎて私には届かなかった。 「僕は、──加賀さんが知っているその人ではないと思うよ。でも、クラスメイトとして忠告する。松下には近付くな」 なぎちゃんは泣いている私にハンカチを差し出したけれど、私はその手を振り払った。ハンカチが宙を舞い、風に流されて芝生の上に静かに落ちた。 「なぎちゃんなんて、大嫌い」 手の甲で涙を強引に拭き取る。首につけていたネックレスを無理やり引きちぎって、手の中で強く握り締めた。首がヒリヒリしていたけど、そんなのは構わなかった。 「こんなもの、信じた私がバカだった。さよなら!」 目の前にいる相手にリングを投げつけて、私は走り去った。涙でなぎちゃんの表情を見ることができなかった。 彼は踏まれて汚れたハンカチを拾い上げると、力強く握って苦しそうに地面に叩き付けた。 [しおりを挟む] [mokuji] |