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幸弘くんはとても優しかった。話せば話すほど、昔のなぎちゃんと重なって目が逸らせなかった。

ある日、下校途中に不意に腕を掴まれた。振り返って見ると──そこにいたのは、なぎちゃんだった。


「話しがある」


そう言い放つと、すぐに腕を離して、すたすたと歩き出した。私はなぎちゃんに付いていこうか迷ったけれど、黙って付いていった。

なぎちゃんから私に近付くなんて、ここに来て初めてだったから。


そよ風が流れていく。植物の香りがとても心地良い場所に着いた。ここにいても校舎から見えないこの場所を、秘密基地みたいだと思った。


「松下幸弘にはこれ以上近付くな」


なぎちゃんが告げた言葉に、私は怒りを覚えた。
なぎちゃんは私の気持ちを少しも分かっていない。

今まで何度もなぎちゃんに話しかけようとして、やめた。私がどんなに辛かったのか、なぎちゃんは何も分かっていないんだ!

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