6/14 幸弘くんはとても優しかった。話せば話すほど、昔のなぎちゃんと重なって目が逸らせなかった。 ある日、下校途中に不意に腕を掴まれた。振り返って見ると──そこにいたのは、なぎちゃんだった。 「話しがある」 そう言い放つと、すぐに腕を離して、すたすたと歩き出した。私はなぎちゃんに付いていこうか迷ったけれど、黙って付いていった。 なぎちゃんから私に近付くなんて、ここに来て初めてだったから。 そよ風が流れていく。植物の香りがとても心地良い場所に着いた。ここにいても校舎から見えないこの場所を、秘密基地みたいだと思った。 「松下幸弘にはこれ以上近付くな」 なぎちゃんが告げた言葉に、私は怒りを覚えた。 なぎちゃんは私の気持ちを少しも分かっていない。 今まで何度もなぎちゃんに話しかけようとして、やめた。私がどんなに辛かったのか、なぎちゃんは何も分かっていないんだ! [しおりを挟む] [mokuji] |