5/14 * 日々が過ぎても、なぎちゃんは相変わらず冷たい人だった。無言で私とすれ違う。 ここに来て、初めて話しかけられた言葉は 「加賀さん、先生から」 だった。なぎちゃんが私の机に紙を置いて、どこかに行こうとする。目を合わせようともしないなぎちゃんの腕を掴んで、向き合いたかった。 “転校させられてしまうの” 彼女の言葉が私の動きを止める。これ以上、なぎちゃんと離れたくない。これ以上、近付いちゃダメなんだ──。 学校は苦じゃない。友達もたくさんできた。けれど、クラスに一人だけ妙に浮いているなぎちゃんが、私の気がかりだった。 「加賀さん」 「なに?」 私に声をかけた人は、見るからに優しそうな男の子だった。なぎちゃんから視線を外して、彼に向ける。この人は、松下幸弘くんだ。どこか昔のなぎちゃんに似ていて、嫌いではなかった。 「今度一緒にどこか遊びに行かない?友達と一緒でもいいからさ」 私はもう一度、窓の外を眺めるなぎちゃんを見た。視線が合うことはない。 この恋は、二度と叶えられないのかな。ずっと待っていたけれど、諦めるべきなのかな。 「うん、いいよ。二人で行こう」 笑顔を浮かべて、私は明るく返事をした。 [しおりを挟む] [mokuji] |