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間近で見たなぎちゃんは、はっとするほど綺麗な顔立ちしていた。全て整ったパーツの美しさに、思わず見惚れた。そんな容貌でも昔のなぎちゃんの面影がある。

まじまじと見られて、ますます眉間にしわを寄せると、掴んでいた手を振り払われた。


「邪魔だ」


そう冷たく言い放つと、彼は下へ降りていった。私は追いかけることが出来なかった。瞳には凍えるような拒絶の色が見えたから。

数年間逢わなかっただけで、なぎちゃんはこんなにも冷たい人間になってしまったのか。逢えた嬉しさなどは、どこかへ飛んでいってしまった。

目の前に現れたなぎちゃんの冷たさに私は、哀しみを隠せなかった。

クラスに戻って、私はなぎちゃんのことを聞くことにした。本人にもいろいろ聞きたいことはたくさんあるのだけど、近付くなというオーラと恐怖で近付くことができなかった。

周りの皆も、積極的に話しかけるような子はいなかった。必要最低限だけの会話を交わしている。その様子から、何だか見えない壁ができているような気がした。


「ねぇ、なぎちゃんってあんな感じなの?」

「なぎちゃん?誰それ?」

「あ、えっと…桐生渚…」


確かなぎちゃんの本名は、桐生渚だったはず。女の子はぽんと手を叩く。どうやら間違っていなかったようだ。


「あー桐生くんね!いつもあんな感じだよ。すっごく優しい王子様なんだけど、家庭に事情があって必要以上に仲良くしないの。可哀相だよねー」

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