8/12 妙に色っぽく微笑む亨くんに、私の胸が大きく高鳴った。心臓が、とてもうるさい。 亨くんは私からゆっくり離れると、唇を拭った。 「ごちそうさま」 その姿がとても色っぽくて、何もしてないのに恥ずかしくなってしまった。周りのみんなは、さっきよりかなり盛り上がっている。 「随分濃厚な口移しだったな、亨!」 「良かったねー留奈!大好きな朝比とチュー出来て!」 かぁあと顔が熱くなる。本当にキスした訳じゃないのに、何だろうこれ。ひとまず、トイレに逃げ込もう! 私はそそくさと部屋を出ていった。 トイレはどこだろうとキョロキョロ辺りを見渡していたら、急に腕をつかまれた。顔を上げて見れば、亨くんだった。 「こっち」 そう言われて、腕を引かれるまま私は亨くんについていった。 カラオケ店から出ていって、ずんずん歩いていく。ある建物を見つけると、その中に入っていった。 廃墟のビル。少し錆びれた階段を上がって扉を開けたら、綺麗な景色が広がっている屋上だった。 「わぁ……キレイ。こんな場所、あったんだ」 「俺のお気に入りの場所なんだ」 亨くんは私の腕を離して歩いていく。柵に手を置いて、景色を眺めた。風が吹き抜けていく。 [しおりを挟む] [mokuji] |