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見えなくとも、自分に対する視線というものは、こうもわかってしまうものなのだろうか。 着替えようとロッカーを開けるが、どうも萩之介からの視線が気になって動きがぎこちなくなってしまう。 だからと言って振り返るのも、何か嫌だ。 俺のことをずっと待っていてくれたのだろうか。 部活が終わったあともしばらく自主練をしていたら、いつの間にか日が暮れそうになっていたので少し急ぎながら部室に入ったら、本を読んでいた滝がこちらを見てお疲れ様、と言ってきた。 まだ居るなんて思ってもいなかったから、ビックリして変な声で返事をしてしまい、クスリと笑われ恥ずかしくなりさっさと着替えたかったのに… 何だ何だ何だ! 俺が一体何をしたって言うんだ! 「おい、滝…っ」 「なに?」 痺れを切らし、振り返ったらやっぱり萩之介はこっちを見ていた。 しかも、俺から目線を一切逸らさずに。 一瞬、息が出来なかった。 その瞳に吸い込まれてしまいそうで、怖いような、でもどこか安心したような気もした。 「なに?どうしたの?」 笑顔で聞いてくる萩之介に心臓がどくん、と跳ねる。 「なな、なんでも、ねぇよ!!」 何故か恥ずかしくなり怒鳴ってからまた着替えを再開する。 どんどん顔に熱が集まってくるのが分かった。 ちくしょう、何でこんな…俺が… 乱暴に着替えていたら、萩之介が笑いながら耳、真っ赤だよ何て言うからまた恥ずかしくなりうるせぇって、自分でも驚くほど弱々しい声で罵倒した。 照れる (原因は分かってる) 120708 |