恋する動詞111題 | ナノ

42.応える(鳳→跡)



「それは、俺様に向かって言ってるのか」



もう自分の気持ちを抑えることができそうもなくて、遂に告げてしまった。



相手は部活の部長で、男。


だけど顔立ちはそこらの女子より綺麗で、堂々とした振る舞い、そして誰にも真似できないカリスマ性。


その全てが俺の心を引き寄せた。


夢中になって追いかけて、たまに見せてくれる笑顔に心を踊らせてみたり。

今思えば俺女子みたいだったな…

でも、恋すればみんなこんな風になるんじゃないのかな。



俺は随分と長い間そんな状態でいたから、日に日に気持ちが増幅していって。
だから今日、跡部さんに告白した。




もう抑えるなんて、我慢するなんて、限界だった。



「はい…跡部さんが、好きなんです」


「俺は、自分より弱いやつを好きにはなれない」


「……」



特別動揺している様子はなくて、至って冷静に、そしてどこか突き放すようにそう言い放った彼に、何も言い返すことができない。


だって事実、俺はこの人より弱い。


「一応言っておくが、テニスのことを言ってるんじゃないからな。
そうじゃなく、俺より強くなってからそれでも俺が好きだなんて思うならまた来いよ。考えてやる」


それだけ言って、部室から出ていった跡部さんは、俺より小さいはずなのにとても大きく感じた。



「…はい、がんばります」



誰もいなくなった部室で俺の声だけが響いた。




応える

(ほんの少しだけ、泣きたくなった。)



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