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「……っ」 遠慮がちな嗚咽が聞こえたおかげで、彼の居場所はすぐにわかった。 建物の壁と向き合って、手をついて俯いている姿が目に入る。 ポロポロと零れる涙がどんどん地面に染み込んでいくのがわかった。 敗けたら、誰だって悔しい。 敗けたら、何だって自分のせいにするのがお前の長所で短所だと思う。 「そうやって岳人は大きくなっていくんやなぁ」 「あ……ゆ、し」 俺に気づいてゴシゴシ目を擦るけど、そんなんで止まるような涙なんて誰も流しはしない。 「俺の前でくらい、無理せんと泣けばええやん」 「バカ言ってんじゃねーよ。かっこ悪ぃだろ?」 「どこがや」 目尻に溜まった涙がまた零れた。 それを困った顔で笑う岳人にこちらが泣きそうになってしまう。 かっこ悪くなんてない。 かっこ悪いのは、頼りない俺の方だ。 力にもなれなくてただ岳人を見るだけしかできない俺の方が、よっぽどかっこ悪い。 (なぁ、どうやったらお前と同じ目線になれるんや) 何も出来ないことが情けなくて、悔しくて、涙が一粒落ちた。 傷つく (もっと近くで君を支えられたら) 120310 |