恋する動詞111題 | ナノ

15.待つ(跡日)



昼休み、生徒会長室に入るとそこにはソファに座って本を読んでいる日吉がいた。


昨日はあんなに面倒くさいだなんだ、駄々をこねていたくせに。



(可愛いやつ…)


こちらに視線を移した日吉のつり上がった目は普段と少し違う。


「なんだ…?」


「いえ、何でも…」



不思議に思って話しかけてみれば、ふいと顔を逸らされた。



何なんだ…気になるだろうが。


「おい、何かあるなら言え」



「何でもありません」



「嘘つけ、言えよ若」



「だから、な………」


ムキになって言い返そうとした日吉の唇を塞いだ。


「あ…ふ、あと…べさ」


「言う気になったか?」


「言いたくない…です」


「…お前が言いたくないならいいが、俺に言いたいって顔にかいてあるぜ?」


「嘘です。跡部さんを殴りたいってかいてあるハズです」



さっきまで可愛くソファに座ってたくせになんだ。もうこれか。



「可愛くねーやつ」



先程とは真逆の感情を今度は口に出して言った。


すると、あきらかに反応した日吉が物凄い形相で勢いよく顔を近づけてきた。



「どうせ俺は可愛くありませんよ。可愛い人が好きならそこら辺のメス猫どもでも誘ってろこのアホ会長が」



いつにも増して早口かつ毒舌に呆気をとられていると、ふんと鼻を鳴らしてさっさと部屋を出ていってしまった。
扉を叩きつけて。


なんだよアイツ。
そんなに気にくわなかったのか?


『可愛くねーやつ』


が…



考えを巡らせながら日吉が落としていった本を手に取り、机の上に置く。

あ、これ俺が前に勧めた本じゃねーか。

日吉の奴探したのか…



「なんで追いかけないんですか」


「うおっ!てててめぇ、ビックリすんだろうが!」


「なんで…追いかけないんですか…跡部さん、やっぱり」



目に見えるくらい俯いていく日吉に、あぁやっぱりなんかあったな。と思い直す。



「言わなきゃ、わかんねー」




俯いてしまった日吉の頭をポンポンしながらできるだけ優しく問いかける。




「さっき…あそこの花壇で」



そこまで言われてすぐにピンときた。


「告白されてたぜ」


「はい、見てました」




やっぱりな。

だからあんなに変な態度とったりしてたのか。



「あの光景見たら、自信なくなっちゃって。不安になったのに、跡部さんは平然としてるし…だから跡部さんが俺のこと本気で想ってくれてるならって、」



試しました。


そこまで言うと、日吉は力なく俺の方へと寄りかかってきた。


「追いかけてくる訳、なかったのだって、本当はわかってたんです。
跡部さんってアホだから、追われることしか知らないし」



「アーン?そりゃ俺様に喧嘩売ってんのか?」



「違いますよ…ただ、俺だけいつも貴方を待って、わざわざ告白シーンを見させられたくないだけです」



まだどこか納得いかない様な顔をしているコイツをそっと抱き寄せたら、自然と腕を背に回してきた。





「世界一可愛いぜ、若」









「うるさい黙れ変態が」






…やっぱり、可愛くねーやつ。





待つ


(たまには待ってて)



111118



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