恋する動詞111題 | ナノ

6.願う(千蔵)



俺は千歳が嫌いだ。


部活にも来ないし、来てもちゃんと練習しないし。

注意したって反省の色なんて、見せやしない。




そんな千歳が大嫌いだ。







『俺も、白石のこと好きじゃなかよ』



我慢できなくなって千歳に、俺お前んこと嫌いや、と言ったあの時。


千歳に嫌いと言われたあの時。

何故かその言葉に胸がチクッとした。

わからないけど、痛くて。

痛くて仕方なくて。




『俺んこつ嫌いって顔に書いてあると。
なのに、俺に構ってくる白石が嫌いっちゃ』


『……』


『嫌いなら、ほっとけば良かと』



なにも言い返せなかった。

傷む心臓が喉元をつっかえさせた。


わからない。なんで、


なんでこんなに





『痛い、千歳…心臓が、痛いっ……』


痛くて痛くて仕方なくて、何故か涙まで溢れて。


千歳が目の前にいるのもお構いなしに泣いた。




『ばってん、今みたいに素直な白石は好き』



『…へ?』


俺の顎を持ち、上にあげ涙の止まらない目に、嫌いな彼がキスを落とした。


『心臓、痛か理由…教えるちゃる』



耳元でそう囁いた彼のその言葉の先が、俺がたった今気づいた答えと同じであることを願った。








願う

(君にしか叶えられない僕の願い)



111019



関西弁も熊本弁も明るくなくて…本当に現地の方々すみません。



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