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「待って待って待って!」 「待たれへん」 もうみんな帰ってしまった後の部室で、俺は何故かユウジに迫られていた。 嘘やん、ユウジは小春と違うん!? ずいずいと歩み寄ってくる彼に、後ずさってばかりいた俺は、ガシャンッとロッカーに背中を打った。 「さ、もう逃げられへんでぇ…白石」 「…何の冗談?ドッキリか?」 「ドッキリやのうて本気やで」 ニヤリと笑うユウジが妙に怖くて、顔から血の気が引くのがわかった。 ユウジの両手が俺の顔の横にあって、本当にもう逃がさないとでも言っているような状態だ。 「ホンマに…?」 「まだ疑うてんのか?」 「せやかて、ユウジは小春が好きなんやろ…?」 「小春にはもう言うてあるし、応援もしてくれとる」 俺から目線を外さないユウジに、何故か俺が目線を逸らしてしまう。 何で、何でそんなに真剣な顔をしてるんだろう。 いつもみたいに、ヘラヘラ笑いながら言ってくれた方が何倍も良かった。 そしたらこんなに戸惑わなくても良かったのに。 「返事は、なくてもええ…けど」 薄目になったユウジがどんどん俺に顔を近づけてくる。 身体が動かない。 ゆっくりと触れた唇がやけに温かく感じて、そこから広がったように頬にも熱が伝わって赤くなった。 「好きや…蔵」 目を瞑って、拳を握りしめる。 この高鳴っている心臓は、何を意味している? もしかしたら…もしかするのかもしれない。 悟る (この気持ちを確信に変えるには、どうしたら良い?) 120820 |